呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~

「中川(なかがわ)さーん、悪いけど百合(ゆり)の間にお茶をお出ししてくれるー?」

 バックヤードの入り口から顔だけのぞかせた店長が声を掛けてきた。

「承知しました」
「ありがとう! 紅茶三人分ねー」

 店長は早口で言うと、店内に戻っていった。きっと閉店後のレジ清算で忙しいのだろう。私は検品中の商品を箱に戻し、階段へと向かった。

 私、中川結衣(ゆい)は二十三歳。去年『株式会社花桐(はなぎり)呉服 』に入社し、本店の販売員として働いている。あと一週間――四月が来たらちょうど入社一年だ。

 花桐呉服は、大正八年に京都で小さな呉服商として創業した老舗だ。
 戦後、東京・大阪の百貨店への出店を開始し、昭和後期には全国にチェーン展開を開始し、現在は約一二〇もの店舗を持つ国内大手の呉服会社として成長を続けている。
 平成の初めに拠点を東京に移し、日本橋に自社ビルを構えて本社とした。
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