呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
「っ……、すみません!」

 悲鳴をぎりぎりでのみ込み慌てて離れようとしたら、背中に回された腕がギュッと締まった。

 なんで⁉

 頭の中が真っ白になった。
 白檀(びゃくだん)の香りとたくましい体の感触に、意識のすべてが持っていかれる。耳の奥で鼓動の音が大きく鳴り響いていた。

 真っすぐ私を見つめる柊真さんの目に、見たことのない熱が宿っている。緑がかった茶色い瞳がゆっくりと近づいてきた。

 えっ、なに? 嘘……キス⁉

 鼻先に吐息を感じ、ギュッと目をつむった次の瞬間、ふわりと体が宙に浮いた。

「きゃあっ」

 突然の浮遊感に驚いて目を開いたら、目線がいつもより高かった。

「なっ、ななななな――」
「夕飯の準備ができたから迎えに来たんだ」

 さも当然のごとくサラリと言われる。

「降ろしてくださいっ、自分で歩けます!』
「さっきみたいに転んだらあぶないだろう?」

 柊真さんはニコッと微笑んでから、そのままスタスタと歩いてリビングに向かう。

 王子様のような彼にこんなふうに運ばれるなんて、まるで本物のお姫様にでもなったような気持ちになってくる。

 勘違いしちゃだめよ。これはエスコートの一環。火傷への責任感から過保護になっているだけで、私が特別なわけじゃない。

 そうやって自分に言い聞かせるたびに、なにか重いものが喉の奥に詰まっていくような息苦しさを覚えた。
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