呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
 髪を緩く編み込んでひとまとめにしてから、着物を着付けて帯を締める。
 今日は着物の外出に最適な気候だ。花冷えの季節のため洋服なら上着が必要だろうけれど、この着物は袷(あわせ)といって裏地がついているし、下には長襦袢(ながじゅばん)も着ているため寒くない。

 編み上げの黒いブーツを履きレースの手袋をつけたら、大正浪漫コーデの出来上がりだ。

 家を出て向かったのは、銀座の老舗百貨店だ。
 柊真さんになにかお礼の品を渡したい。

 電車で移動中、どんなものをプレゼントしたらいいのか散々考えた。
 彼なら欲しいものは大抵自分で買えるだろう。部屋のインテリアからも趣味がいいのは見て取れるので、下手なものはあげられない。実用品は使い勝手もあるので難しい。

 あっても邪魔にならなくて、でも喜んでもらえそうなもの。お礼という名目だけど、できることなら私の恋心も忍ばせたい――迷惑にならない程度に。

 答えが決まらないままお店に到着し、必死にあちこちのフロアを見回った末、ようやく納得のいくものを手にした時には、すっかりお昼ご飯の時間は過ぎていた。

 柊真さん、喜んでくれるかなあ……。

 買い物を終えた満足感と、この後の予定への興奮から、お昼ご飯を食べていないというのに空腹を感じない。

 時刻は三時前。柊真さんとの約束は六時なので、まだ時間は十分にある。
 地下でお菓子を買って、お店に差し入れがてら迷惑をかけたお詫びと完治の報告へ行くことにした。
< 33 / 58 >

この作品をシェア

pagetop