呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
 階段を二階に上ってすぐのところにある給湯室に入る。
 本店は本社ビルの一階と二階で、一階は一般の売り場、二階は特別顧客向けの応接室になっている。応接室で接客できるのは店長クラス以上の社員で、VIPになると、社長や副社長が直接接客することもあるのだとか。

「閉店後にお客様ってことは、たぶんVIPだよねえ」

 重役以上対応の顧客になると、大抵営業時間外にやってくる。私のような平社員はお茶出すくらいしかできないけれど、大事なお客様にお茶を出すのだから粗相があってはいけない。気合を入れ、着物の袖から出したたすきを掛けた。

 やかんを火に掛け、戸棚から一番高いティーセットを取り出す。英国王室御用達で有名な最高級ブランドのティーセットだ。うっかりひびでも入れようものなら、私の給料二カ月分が一瞬で飛んでしまう。

 沸かした熱湯を、茶葉を入れたティーポットに勢いよく注ぐ。ポットにティーコジーを被せ、砂時計をひっくり返してカップ&ソーサーと共にお盆の上に乗せた。
 三月下旬の今の気温ではすぐにお茶が冷えてしまうため、熱々の紅茶を提供するためにはこの状態で応接室まで運び、その場でカップに注ぐようにと言われている。

 責任とティーポットの重さでずっしりとしたお盆を、慎重に持ち上げる。給湯室のドアノブに手を掛けようとしたとき、ドアが突然開いた。
 慌てて体を後ろに引いたら、お盆が傾いた。ティーポットも斜めになる。
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