呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
 十五分後、着いたのは大正ロマン漂う瀟洒(しょうしゃ)な洋館だった。

「素敵……」

 玄関ホールや階段など、すべてが当時の上流階級の暮らしを思わせる優美さで、ひとりでにため息が漏れる。

「ここはもともと明治に建てられた華族の住宅兼迎賓館で、できる限り当時のままの姿を保存しつつ、予約限定のレストランを運営しているんだ」

 柊真さんの説明を聞きながら案内された二階の部屋に入った。よく磨かれた木製の窓枠の向こうには立派な日本庭園が見える。

 席につかずに見惚れていたら、柊真さんが近くで見ようと窓辺に誘ってくれた。
 灯籠につけられた灯と窓からの明かりが、庭の木々を優しく浮かび上がらせている。

「こんな素敵な場所に連れてきてくださって、ありがとうございます」
「こちらこそありがとう。こんなにかわいくして来てくれたのは、俺との食事のためだとよろこんでもいいのかな?」

 隣に並んだ彼はいつもの優しい微笑みは少し違う、色気のにじんだまなざしで見つめられ、じわりと全身が熱くなる。

「それなのにどうして食事に行けなくなったなんて言ったんだ? なにか困ったことでも起きたとか」

 すぐにかぶりを振って否定する。

「もしかして、俺はなにか君を困らせるようなことをした?」

 もう一度首を左右に振ろうとして、ギリギリで止めた。

 逃げずにきちんと聞かなきゃ。許嫁がいる男性とふたりきりで食事をするなんて、やっぱりよくないもの。
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