呉服王子のギャップがメロすぎです!~料理上手な御曹司に胃袋ごと捕まりました~
「箸置きだ」

 箱の中には、錫(すず)でできた桜の箸置きがふたつ入っている。
 錫は金銀に次ぐ高価な金属で、酸化しにくく抗菌作用が強いそうだ。洋食器然とした銀色に施された〝和〟のデザインは、ひと目見たとき柊真さんを彷彿とさせた。

 柊真さんは箱の中から取り出すと、顔の前に持ち上げる。

「桜……きれいだな」

 彼がうっとりと目を細める。私は鼓動が早くなるのを感じながら、両手をギュッと握りしめた。

 言うなら今しかない。

「それは私の気持ちです。私、柊真さんの手料理を食べているときが一番幸せでした。火傷は痛かったけど、柊真さんが作った料理を食べさせてもらえる奇跡が起こるなら、火傷も悪くないなって……不謹慎でごめんなさい」

 なにか言いたげな柊真さんが口を開く前に、気持ちを全部言いきるつもりで早口になる。

「この五日間は火傷なんてどうでもよくなるくらい幸せな時間でした。私がいなくなった後も、柊真さんが食事をするときに一瞬でも私を思い出してくれたらいいな、桜の下で出会ったのが私だって気づいてくれたらいいなって、そう願いながら選びました」
「それって――」
「私、柊真さんが好きです。一年前のあの日から、ずっとあなたが好きでした」

 言いきった次の瞬間、再び私は彼の腕の中にいた。
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