その溺愛、予想外につき。
プロローグ
*始まりの物語。
夕方の部屋は、少しだけ薄暗かった。
レースのカーテンの隙間から差しこむオレンジ色の光が、床の上に細長く伸びている。
机の上には開きっぱなしのノートと、飲みかけのジュース。
ベッドの上には、脱ぎっぱなしのカーディガン。
いつもと変わらない、見慣れた兄の部屋だった。
だけど、その空気だけが、今日はいつもと全然違っていた。
「……お兄ちゃん、大丈夫?」
おそるおそる声をかけると、ベッドに腰かけていた兄――天宮涼は、小さく肩を揺らした。
うつむいたままの横顔は青白くて、いつもみたいな余裕の笑みはない。
私は部屋の入り口に立ったまま、ぎゅっと指先を握る。
こんな顔のお兄ちゃんを見るのは、初めてだった。
ついさっきまで、リビングの向こうでは大人たちの低い声がしていた。
事務所の人と、お母さんと、お兄ちゃん。
扉越しだったから全部は聞こえなかったけれど、言い争うみたいな空気だけははっきり伝わってきた。
レースのカーテンの隙間から差しこむオレンジ色の光が、床の上に細長く伸びている。
机の上には開きっぱなしのノートと、飲みかけのジュース。
ベッドの上には、脱ぎっぱなしのカーディガン。
いつもと変わらない、見慣れた兄の部屋だった。
だけど、その空気だけが、今日はいつもと全然違っていた。
「……お兄ちゃん、大丈夫?」
おそるおそる声をかけると、ベッドに腰かけていた兄――天宮涼は、小さく肩を揺らした。
うつむいたままの横顔は青白くて、いつもみたいな余裕の笑みはない。
私は部屋の入り口に立ったまま、ぎゅっと指先を握る。
こんな顔のお兄ちゃんを見るのは、初めてだった。
ついさっきまで、リビングの向こうでは大人たちの低い声がしていた。
事務所の人と、お母さんと、お兄ちゃん。
扉越しだったから全部は聞こえなかったけれど、言い争うみたいな空気だけははっきり伝わってきた。