その溺愛、予想外につき。
デビュー目前。
新しく結成されるアイドルグループ。
兄はそのメンバーに選ばれていた。

ずっと、夢だった。
歌って踊って、たくさんの人の前に立つこと。
鏡の前で何度も練習して、眠い目をこすりながらレッスンに通って、それでも楽しそうに笑っていた兄を、私は知っている。

だからこそ、わからなかった。

どうして今日は、こんな顔をしているのか。

「お兄ちゃん……?」

もう一度呼ぶと、涼はやっと顔を上げた。
でも、目が合った瞬間、すぐに困ったように笑う。

「なんでもないよ、ふわり」

その言い方が、いちばんなんでもなくなかった。

「なんでもなくないよ」

思わず強く言ってしまって、自分でも少しびっくりする。
でも、引っ込められなかった。
だって明らかにおかしい。
兄は昔から、つらい時ほど平気な顔をする人だった。

私が泣いた時はすぐ気づくくせに、自分のことになると何も言わない。
小さい頃から、ずっとそうだ。

お兄ちゃんは少しだけ目を伏せて、それから静かに息を吐いた。
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