その溺愛、予想外につき。
違う。

そうじゃない。

俺が大事にしたいのは、涼の妹だからじゃない。
ふわりだからだ。

「それもある」

嘘ではない。
けれど、本当の全部でもない。

「でも、それだけじゃないよ」

「じゃあ、なに?」

ふわりの瞳が、俺をまっすぐ映す。

俺はそっと笑った。

「それは、まだ秘密」

「るかって、秘密ばっかり」

「ふわりに言われたくないなあ」

その瞬間、ふわりが息を止めた。

俺はわざと、何も知らないふりをする。

「どうしたの?」

「……別に」

「またそれ?」

「うるさい」

やっと、ふわりらしい声が戻ってきた。

俺はその声を聞きながら、包帯を結ぶ。

「はい、終わり」

「ありがとう」

「どういたしまして、ふわり」

今度は、はっきり呼んだ。

ふわりは目を見開いたけれど、もう訂正しなかった。

ただ、耳を赤くして俯いている。

その反応を見て、俺は確信する。

まだ言わない。
ふわりが自分から話してくれるまで、俺は知らないふりをする。

だって、俺が守りたいのは秘密だけじゃない。

ふわりの居場所も。
ふわりの笑顔も。
そして――

俺のことを見つめてくれる、その瞳も。

「るか」

「ん?」

ふわりが、少しだけ迷うように口を開いた。

「……私が、もし」

言いかけて、口を閉じる。
< 58 / 65 >

この作品をシェア

pagetop