その溺愛、予想外につき。
しまった。

けれど、すぐに笑ってごまかす。

「……なに、その顔」

「今、なんて言った?」

「涼。涼って言った」

「嘘」

ふわりの声が、少し震えていた。

俺は足首から手を離して、ゆっくり顔を上げる。

「どうして嘘だと思うの?」

「だって……」

ふわりは言葉を探すように視線を落とした。

その横顔があまりにも不安そうで、胸が痛くなる。

今すぐ言いたい。

最初から知ってる。
俺が見ているのは、涼じゃなくてふわりだって。

でも、ここで言えば、ふわりはきっと逃げる。

だから俺は、いつものように笑った。

「ごめん。ちょっとからかっただけ」

「……最低」

「うん。よく言われる」

ふわりはむっと頬を膨らませた。

その表情が可愛くて、思わず笑いそうになる。
でも、今はからかうべきじゃない。

「でもさ」

俺は、包帯を巻きながら声を落とした。

「俺の前では、無理しなくていいよ」

ふわりの指が、膝の上でぎゅっと握られる。

「どうして?」

「ん?」

「どうして、そんなに優しくするの」

まっすぐな質問だった。

俺は一瞬だけ答えに迷う。

好きだから。
ふわりが、男装していても、涼の代わりをしていても、ふわりだから。

そう言えたらどれだけ楽だろう。

でも、今はまだ言えない。

「……大事だから」

ふわりが顔を上げる。

「涼の妹だから?」

その声に、かすかな寂しさが混じっていた。

俺は胸の奥が締めつけられるのを感じた。
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