君を帰すことだけはできない〜北の王太子が五年越しに愛した南の町娘〜

顔が近づき、吐息が、唇に触れる。熱い口づけ。
「……んっ」
リリーの喉から、小さな声が漏れた。甘く、可愛らしい声。
ノアの片手がリリーの腰を引き寄せた。華奢な身体が、彼の胸に吸い込まれる。白いドレスの絹が、シャツの綿と擦れる。硬い胸板が、柔らかな胸を押し潰す。
唇が離れた。互いの息が混ざる。ノアはもう一度、深く唇を重ねた。今度は、飢えていた。角度を変え、何度も何度も。
濡れた音が、静かな部屋に響く。
「……ふ、ぁ……」
リリーの指先が、ノアの胸元のシャツを掴んだ。力が入らない。膝が震える。ノアの腕が、それを支えた。華奢な腰を掌で抱き、崩れ落ちないように。
ノアはリリーを抱き上げた。静かにベッドへ横たえる。白いシーツの上に、白いドレスのリリー。栗色の髪が、枕元に散らばる。
ノアはシャツのボタンを外した。一枚、また一枚。露わになる胸板。引き締まった腹筋。肩から腕へと続く、硬い筋肉の線。燭光を受けて浮かび上がる、男の身体。
リリーは息を呑んだ。目を見開いたまま、動けない。ノアの放つ色気と威圧感に、圧倒されていた。
ノアの手が、リリーの鎖骨に触れた。指先が、白い肌をゆっくりと滑る。胸元へ。柔らかな曲線を、掌全体で包み込むように。
何年も触れられなかった温もり。何度夢に見た柔らかさ。それが今、掌の中にある。