君を帰すことだけはできない〜北の王太子が五年越しに愛した南の町娘〜
12 攫われた町娘――王太子はすべてを懸ける
リリーがケルビンの求婚から逃げ続けて、三週間が経っていた。市場の露店に立つたび遠くから彼の視線を感じた。逃げても逃げても、その眼差しは執拗に追いかけてくる。
ケルビンの実家である商家から届く菓子折り、父が嬉しそうに語る縁談の利点と弟の期待。すべてがリリーの肩にのしかかり、逃げ場を塞いでいく。
「あの人、いい人じゃないか。お前のことを長い間想ってくれている。この街で、これ以上ない縁談だ」
父はそう言った。ケルビンは優しい。幼い頃からリリーを気にかけ、市場で彼女を守り家族のように接してくれる。
「考えさせて……」
リリーは、そうしか言えなかった。あの人はもう来ない。北の白い宮殿に帰り王子として生きている。身分違いの恋は、母の言葉通りどちらかを壊す。
もう壊れている。だからこれ以上、誰も壊さないために。父を、トムをケルビンを。ならばせめて、大切な家族が壊れる前にこの想いを終わらせなければならない。
ケルビンの実家である商家から届く菓子折り、父が嬉しそうに語る縁談の利点と弟の期待。すべてがリリーの肩にのしかかり、逃げ場を塞いでいく。
「あの人、いい人じゃないか。お前のことを長い間想ってくれている。この街で、これ以上ない縁談だ」
父はそう言った。ケルビンは優しい。幼い頃からリリーを気にかけ、市場で彼女を守り家族のように接してくれる。
「考えさせて……」
リリーは、そうしか言えなかった。あの人はもう来ない。北の白い宮殿に帰り王子として生きている。身分違いの恋は、母の言葉通りどちらかを壊す。
もう壊れている。だからこれ以上、誰も壊さないために。父を、トムをケルビンを。ならばせめて、大切な家族が壊れる前にこの想いを終わらせなければならない。