君を帰すことだけはできない〜北の王太子が五年越しに愛した南の町娘〜
つまりーーリリーが、攫われたのだ。
机上の書類が床に崩れ落ちる。立ち上がろうとして、膝が折れそうになるのを、机の縁を必死に掴んで堪えた。己の想いを封印し、王太子として生きていれば、彼女だけは平穏な日々を送れると信じていた。
「俺の……せいだ」
人質としてアッシュワで過ごした五年間。彼女が自分と関わったというだけで、これほどの災厄を背負うことになったのだ。
「ぐっ……あぁッ」
彼女は今、どうしているのだろう。恐怖に震え、闇の中で助けを待っているのではないか。髪を切り落とされる時、どれほどの恐怖を感じたのだろうか。想像するだけで、心臓が鷲掴みにされるような激痛が走った。
ノアは立ち上がった。
「マロン!」
すぐに扉が開き、マロンが駆け込んでくる。
「ハルバートを呼べ。軍の統括権を預かるための手続きを整えろ。宰相には……謁見を求める」
迷いなど一瞬もなかった。彼女を失うくらいなら、世界中を敵に回そうと構わない。
机上の書類が床に崩れ落ちる。立ち上がろうとして、膝が折れそうになるのを、机の縁を必死に掴んで堪えた。己の想いを封印し、王太子として生きていれば、彼女だけは平穏な日々を送れると信じていた。
「俺の……せいだ」
人質としてアッシュワで過ごした五年間。彼女が自分と関わったというだけで、これほどの災厄を背負うことになったのだ。
「ぐっ……あぁッ」
彼女は今、どうしているのだろう。恐怖に震え、闇の中で助けを待っているのではないか。髪を切り落とされる時、どれほどの恐怖を感じたのだろうか。想像するだけで、心臓が鷲掴みにされるような激痛が走った。
ノアは立ち上がった。
「マロン!」
すぐに扉が開き、マロンが駆け込んでくる。
「ハルバートを呼べ。軍の統括権を預かるための手続きを整えろ。宰相には……謁見を求める」
迷いなど一瞬もなかった。彼女を失うくらいなら、世界中を敵に回そうと構わない。