君を帰すことだけはできない〜北の王太子が五年越しに愛した南の町娘〜
 王都の灯が、一つ、また一つと灯り始めていた。やがて、空が完全に闇に変わった。星が、現れた。

 「……覚えているか」

 「覚えている。三年前……星空の下で、名前を教えてくれた夜」

 リリーは空を見上げたまま答えた。

 「あの時……あなたが星を見て『綺麗だ』と言った」

 「……言った」

 ノアはリリーの肩に顎を乗せた。プラチナブロンドの髪が、リリーの頬に触れる。

 「……同じ星だよ」

 リリーは言った。細い指が、彼の掌に触れる。

 「あの夜見た星も……今見ている星も……同じ」

 五年前も、今も、変わらずに輝き続けている光。ノアの掌が、リリーの手を包み込むように握りしめた。

 「……私はずっと忘れなかった」

 リリーは囁いた。

 「……俺もだ」

 ノアは空を見上げたまま言った。

 「……これからずっと一緒だ」

 ノアはゆっくりと顔を近づけ、その唇を重ねた。

 「……愛してる」

 ノアは熱を帯びた額を彼女の額にくべ、低く掠れた声で囁く。

 「……私も」

 頭上を埋め尽くす群青の夜空の下、互いの温もりだけを感じる穏やかな時間が流れていた。

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