未来に続く物語
 やがて上映が終わる前に古河は関係者出入口へ向かって行き、古河の姿を何度か目で追ったあと、羽山が館内の出入口からこちらへ向かってきた。

「志央さん、休憩の時間です」

「ありがと。羽山くんはいいの?」

 いつもの調子で返してみると、羽山は口元を緩ませ、思い付いたように言った。

「一緒に行きます?」

「席を空けていくことは出来ない」そう言いながら、鞄を手に取り、視線を向けると、羽山が返してきた。

「古河さんに任せたらよくない?」

 その時、関係者出入口から古河が出てきて、こちらに視線を向けていた。

「よくない。まだ勝手も分からない場所だし、羽山くんは対応が早いから、任せます」

「たった一時間なのに、残念。ま、シゴデキだから仕方ないか」羽山は明るい顔で言うと、受付の入口の傍に立ち、こちらを促すように小さな扉を開けた。

「何か買ってこようか?」と尋ねながら受付を抜け出し、顔を上げた瞬間だった。

 羽山の手が伸びてきて、指先が頬を掠めたと同時に身を躱した。

 互いに目が合ったところで、『あ』とでも言うように口を開き、苦笑いを浮かべながら、羽山が先に言った。

「ごめん。髪の毛、口に入りそうだったから」

「ごめんね。急だったから驚いて……どこかに当たったりしてない?」

 慌てて口にしてみたものの、羽山は首を軽く振って見せ、受付に入ってから、こちらに向かって言った。

「いい香りですね。今度、俺に選んでください。休憩どうぞ」

「女性物しか分からないから、ネットで調べたほうがいいと思う。行ってきます」

 そう返してから、館内の出入口へ足を運んでいくと、古河がこちらに向かい、声を掛けてきた。

「志央」

 一歩踏み出したのを見計らったように古河は一歩近づき、ネックウォーマーを外して、こちらの首元へそっと掛けた。

「なん、で……」

 詰まり掛けたことなど気にせず、古河は平坦な顔で口を開いた。

「外寒いから、的な」

 そこでよく見れば、白地に黒い線が入ったアノラックを着ていて、チャックにはピアスがぶら下がっていた。

 チャームのような物から目を逸らしたところで、何も思い浮かばず、首元に手を伸ばすと、古河が声を掛けてきた。

「それに触るな。静電気が起きるから、休憩が先。行ってらっしゃい」

 その口調は落ち着いて聞こえたけれど、どこか引っかかるものがあり、返す言葉が見つからなかった。
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