未来に続く物語
 喫茶店から出て百貨店に寄ることを思いつき、ネックウォーマーを探して歩いた。洗って返すには間が空くし、そのまま返しても何かを言われるのは容易に浮かぶ。けれど、新しいものを買っても、結局同じことに行き詰まる。そう気付いたときには会計が済んでいて、綺麗な紙袋を目にしていた。

 下部の通路から更衣室へ向かい、ネックウォーマーを外すと、髪の毛が静電気で纏わりついた。軽く髪を払ってから、手にした物を見ると、毛羽立ちは寝かされていて、所々ほつれていた。タグを見ても文字が擦れていて、どこの品物かも判別できなかった。

 それでも首元は暖かくてちょうどよく、喫茶店からここまでの道のりも寒さを凌げた。

 ロッカーのハンガーにネックウォーマーを掛け、静かに扉を閉めたあとで、映画館に足を運んだ。

 すると、受付は羽山から古河に入れ替わっていて、古河は煙草をくわえたまま、パイプ椅子に腰を預けていた。

「お疲れさまです。ありがとうございました」そう言うと、古河は視線を向け、軽く笑ってから、席を立った。

 そこで、こちらを促すような素振りをしたかと思うと、少し眉を顰めて言った。

「何があった」

 その口調はいつもより早く、こちらが席に行く前に、古河が向かってきた。

「近くの店に、行ってきました」と答えると、すぐに古河は「どこだよ」と言い、さらに眉を顰めた。

「駅の傍です」と言いながら、紙袋を渡そうとしたとき、古河の手が伸びてきた。その手がこちらの腕を掠めると、そのまま戻っていった。

「また縺れたかと思った。ごめん……」

 古河の狼狽えた様子に、こちらまで戸惑い、紙袋を支えるように両手で持ち、古河に向けて差し出した。

「寒そうなので、的な……」

 あれほど考えた末に、出てきた言葉が、古河と同じもので、途端に気まずくなった。

 すかさず古河は紙袋を手にし、中を探りながら、こちらを見ていた。

 その視線に居た堪れなくなり、受付に駆け込み、鞄を置いたところで、古河の声が聞こえてきた。

「あったけぇ」

 ほっとしたような息遣いが分かるくらい、古河の口調は柔らかく穏やかだった。

「済みませんでした。後日に……」そう言いかけたまま視線を向けると、古河はカウンターに両手を乗せ、組むようにして、こちらを眺めて言った。

「似合う?」

 平坦な顔を見て苦笑いをし、一度頷いてみせてから、静かに返した。

「仕事に戻ってください」

 古河は身体を戻して、手をこちらの頭に乗せ、軽く触れたあとで言った。

「髪の毛、立ってた」

 慌てて髪の毛を整えていると、古河は少し口角を上げてみせ、首を少しすぼめながら、関係者出入口のほうへ向かって行った。
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