未来に続く物語
スクリーンが映像に切り替わり、広告が一つずつ流れ始めた。何気なく見ていると、注意事項が映し出され、スクリーンの端の出入口から古河が抜け出してきた。
暗がりでも分かる無造作な髪の毛と、アノラックの白地が肩の形を浮かび上げていた。
ゆっくりとした足取りで、こちらを見ながら近づき、すぐ傍に立って言った。
「おつかれさん。顔に書いてるぞ、『困ってます』って」
低い声が館内に漂うように聞こえ、隠すようにコートのポケットに手を掛けると、古河はアノラックのポケットに手を入れ、煙草を取り出して口にくわえた。
「禁煙です」そう言ったとき、古河は『あ』とでも言うように口を開き、煙草を箱に戻しながら、「失礼しました」と言って、ポケットに仕舞った。
そのままコートのポケットの中を探ると、指先に何かが当たり、摘んでみたところで、昨夜作った珈琲キャラメルが出てきた。
戻そうか悩みながらも、古河に向けて差し出した。
「口汚しに、的な……」
すると、古河は一度こちらを見て、「いただきます」と言ってから、すぐさま包み紙を開け、キャラメルを口に含んだ。
確かめるように口内で転がしながら、徐々に口元を緩ませ、「うめぇ……」と呟き、噛み締めていた。
「失敗作です」と言うと同時に、スクリーンが明るくなり、古河の表情が少しだけ柔らかく見えた。
「すげぇじゃん、手作り。飽きない味してる」古河はそう言いながら隣に並び、こちらの手を掬うように取り、「冷てぇ手してんな……」と口元に当て、手の甲に息を吹きかけた。
「なに……」思わず口にすると、古河は「それ以上話すな。始まるぞ」と言い、手を絡めたまま、繋いだ手を静かに下ろした。
開いた口を戻して前を見ても、手元が気になって落ち着かず、指先を僅かに動かして意識を逸らした。
けれど、古河の親指が手の甲を軽く触れ始め、映像すら追えなくなり、息を潜めながら、ただ呼吸を繰り返していた。
次第に映画は佳境に入り、男女の再会と共に、感動的な曲が流れてきた。二人の出会いまでは分からないものの、恋人として結ばれた最後のシーンで幕を閉じた。
ふと手が解けたかと思うと、再び指が絡み、握る力が強くなり、気づけば首元に顔が近づいていた。
思わず唾を飲み込んだとき、首元に唇が触れて、そのまま押し当てられた。
「待っ……、古河、さん……」
言葉は盾にもならず、片方の手は絡んだままで、もう一方でどこかを必死に掴もうとしていた。
その手を軽く避けながら、古河は唇を押し当て、縋り付くように耳元まで這わせると、静かに囁いた。
「それはそう。けど……すっげぇ好き」
暗がりでも分かる無造作な髪の毛と、アノラックの白地が肩の形を浮かび上げていた。
ゆっくりとした足取りで、こちらを見ながら近づき、すぐ傍に立って言った。
「おつかれさん。顔に書いてるぞ、『困ってます』って」
低い声が館内に漂うように聞こえ、隠すようにコートのポケットに手を掛けると、古河はアノラックのポケットに手を入れ、煙草を取り出して口にくわえた。
「禁煙です」そう言ったとき、古河は『あ』とでも言うように口を開き、煙草を箱に戻しながら、「失礼しました」と言って、ポケットに仕舞った。
そのままコートのポケットの中を探ると、指先に何かが当たり、摘んでみたところで、昨夜作った珈琲キャラメルが出てきた。
戻そうか悩みながらも、古河に向けて差し出した。
「口汚しに、的な……」
すると、古河は一度こちらを見て、「いただきます」と言ってから、すぐさま包み紙を開け、キャラメルを口に含んだ。
確かめるように口内で転がしながら、徐々に口元を緩ませ、「うめぇ……」と呟き、噛み締めていた。
「失敗作です」と言うと同時に、スクリーンが明るくなり、古河の表情が少しだけ柔らかく見えた。
「すげぇじゃん、手作り。飽きない味してる」古河はそう言いながら隣に並び、こちらの手を掬うように取り、「冷てぇ手してんな……」と口元に当て、手の甲に息を吹きかけた。
「なに……」思わず口にすると、古河は「それ以上話すな。始まるぞ」と言い、手を絡めたまま、繋いだ手を静かに下ろした。
開いた口を戻して前を見ても、手元が気になって落ち着かず、指先を僅かに動かして意識を逸らした。
けれど、古河の親指が手の甲を軽く触れ始め、映像すら追えなくなり、息を潜めながら、ただ呼吸を繰り返していた。
次第に映画は佳境に入り、男女の再会と共に、感動的な曲が流れてきた。二人の出会いまでは分からないものの、恋人として結ばれた最後のシーンで幕を閉じた。
ふと手が解けたかと思うと、再び指が絡み、握る力が強くなり、気づけば首元に顔が近づいていた。
思わず唾を飲み込んだとき、首元に唇が触れて、そのまま押し当てられた。
「待っ……、古河、さん……」
言葉は盾にもならず、片方の手は絡んだままで、もう一方でどこかを必死に掴もうとしていた。
その手を軽く避けながら、古河は唇を押し当て、縋り付くように耳元まで這わせると、静かに囁いた。
「それはそう。けど……すっげぇ好き」