未来に続く物語
翌日は十時に迎えに来ると言われ、朝早くから何を着ようか迷い、古河の装いに寄せるようにした。
灰色のカシミアニットにインディゴの膝上デニムスカート、合わせて黒の膝上タイツを履いてから、黒のマウンテンパーカーを手にし、ベッドの上に放り投げた。
ドレッサーに向かい、鏡を見ながら化粧をし、しばらく眺めてから、髪のセットに取り掛かった。
軽くなった髪の毛を整えながら、鏡を眺めているうちに、帰り際に古河から言われたことが、頭の中に浮かんできた。
『髪の毛、似合ってんじゃん。すっげぇ可愛い』
狼狽えたまま、ろくに礼も言わず、踊り場まで駆けたけれど、車は停まったままだった。少し眺めたところで、ようやく走り出して行った。
逃げるようにして来たことが、古河の癪に触れたのかもしれないと思い、マウンテンパーカーを羽織ったあとで、ネックウォーマーを手にして考え始めた。
けれど、ほとんどが初めてのことで、何を思い出しても、胸の辺りに妙な感覚が残った。
不意に携帯が震えて、慌てて手にしてみると、『ついた』の一言が表示されていた。再び軽く髪の毛を整え、顔を眺めてから、ネックウォーマーを掛けて、家から抜け出した。
車は昨日と同じ場所に停まっていて、素早く助手席に乗り込み、シートベルトを締めながら言った。
「おはようございます。昨日は済みませんでした。ありがとうございました」
思いきり吐き出したところで、古河はこちらをみつめたまま、動きを止めていた。
「なん、ですか……」そう尋ねてみると、古河は口元を緩め、「可愛すぎ……」と言い、すぐさま「さ、行きますか、お嬢さん」と煙草をくわえ、火を点けてから、ハンドルを持ち、車を走らせて行った。
慣れない言葉に戸惑いながらも、背もたれに身体を預け、流れ去る景色を眺めていた。
車は高速道路に向かって行き、三車線の道路を走り続けると、上部に青い案内板が見えてきて、行き先が都心部だと分かった。
そこで初めて会ったときのことを思い出し、どこへ向かっているのかを想像し始めた。
すると、助手席の右端に乗せた手が掬われ、温もりが伝わってきたと同時に、煙草の煙が微かに漂ってきた。
「どっか行きたいとこあんなら連れてくけど……」
古河はそう言って、こちらを窺いながらも、視線を前に戻して器用に車を走らせていた。
「そう言われましても……」と、なぜか身構えてしまい、戸惑いながら探していると、古河は軽い息を飛ばしたあとで言った。
「じゃあ、今度にするか」
車は高速道路を下りて行き、賑やかな大通りを抜け、郊外に向かって行った。
灰色のカシミアニットにインディゴの膝上デニムスカート、合わせて黒の膝上タイツを履いてから、黒のマウンテンパーカーを手にし、ベッドの上に放り投げた。
ドレッサーに向かい、鏡を見ながら化粧をし、しばらく眺めてから、髪のセットに取り掛かった。
軽くなった髪の毛を整えながら、鏡を眺めているうちに、帰り際に古河から言われたことが、頭の中に浮かんできた。
『髪の毛、似合ってんじゃん。すっげぇ可愛い』
狼狽えたまま、ろくに礼も言わず、踊り場まで駆けたけれど、車は停まったままだった。少し眺めたところで、ようやく走り出して行った。
逃げるようにして来たことが、古河の癪に触れたのかもしれないと思い、マウンテンパーカーを羽織ったあとで、ネックウォーマーを手にして考え始めた。
けれど、ほとんどが初めてのことで、何を思い出しても、胸の辺りに妙な感覚が残った。
不意に携帯が震えて、慌てて手にしてみると、『ついた』の一言が表示されていた。再び軽く髪の毛を整え、顔を眺めてから、ネックウォーマーを掛けて、家から抜け出した。
車は昨日と同じ場所に停まっていて、素早く助手席に乗り込み、シートベルトを締めながら言った。
「おはようございます。昨日は済みませんでした。ありがとうございました」
思いきり吐き出したところで、古河はこちらをみつめたまま、動きを止めていた。
「なん、ですか……」そう尋ねてみると、古河は口元を緩め、「可愛すぎ……」と言い、すぐさま「さ、行きますか、お嬢さん」と煙草をくわえ、火を点けてから、ハンドルを持ち、車を走らせて行った。
慣れない言葉に戸惑いながらも、背もたれに身体を預け、流れ去る景色を眺めていた。
車は高速道路に向かって行き、三車線の道路を走り続けると、上部に青い案内板が見えてきて、行き先が都心部だと分かった。
そこで初めて会ったときのことを思い出し、どこへ向かっているのかを想像し始めた。
すると、助手席の右端に乗せた手が掬われ、温もりが伝わってきたと同時に、煙草の煙が微かに漂ってきた。
「どっか行きたいとこあんなら連れてくけど……」
古河はそう言って、こちらを窺いながらも、視線を前に戻して器用に車を走らせていた。
「そう言われましても……」と、なぜか身構えてしまい、戸惑いながら探していると、古河は軽い息を飛ばしたあとで言った。
「じゃあ、今度にするか」
車は高速道路を下りて行き、賑やかな大通りを抜け、郊外に向かって行った。