未来に続く物語
 暫く休んでから車で市街に戻り、家まで送って貰ったあとで、近所のスーパーに向かった。

 閉店間際の店内は静かで、早足で歩きながら、パンの材料や中身の具材をカゴに入れ、会計を済ませてから、スーパーを抜け出した。

 家に帰ってからはパンの仕込みと具材の準備をし、お風呂に入ったあとで、少し小説を読んでから眠りに就いた。

 翌朝。目を覚ましてから、オーブンでパンを焼き、具材を挟んでサンドイッチを作った。
 
 簡易のランチパックに詰めて、適当な袋に、倒さないように入れ、玄関先に置いてから、身支度に取り掛かった。

 クローゼットを開けて何を着ようか悩み、目に付いたデニムジャケットを手に取り、ニットワンピースとタイツをベッドへ放り投げ、扉を閉めたところで携帯が震えた。

 ドレッサーに置いた携帯を確認すると、「ついた」の一言が表示され、慌てて着替えてから、軽くメイクして髪をハーフアップに結んだ。そこで二つ並んだ香水を目にし、使い切った瓶を避け、新しい物を選んで耳の裏に軽く付けた。

 そこから駆け足で家を抜け出し、鍵を閉めようとしたところで袋を忘れたことに気づき、玄関先から手を伸ばして取り、鍵を閉めてから、再び駆け足で車まで向かった。

 助手席に乗り込むと、すかさず彼が「おはよーさん」と言って、こちらの首元に近づき、「俺、こっちのが好き」と囁くように告げ、すぐ離れていった。

「よかった……」と口にしながらも、気持ちが追いつかずに、シートベルトを締める手が滑りそうになった。

 すると、彼がハンドルを握り、車を進めながら、おもむろに口を開いた。

「良いことでもあったの?お嬢さん」

 尋ねられて、膝の上の袋を思い出したものの、落とさないように抱えて返した。

「内緒、的な」

「俺の移ってんじゃん……」彼はそう言って、口元を緩ませ、左のポケットを探り、「手、出して」と促してきた。

 言われるままに右手を出すと、白い箱が置かれ、その手が離れた瞬間、彼の薬指が目についた。

 手の平の上に置かれた物を見つめたまま、息を整えるように、何度か呼吸を繰り返していると、煙草の煙が漂ってきて、低い声が聞こえてきた。

「正式な物は後から、的な」

 その言葉に胸の奥から何かが込み上げ、静かに箱を開いてみると、彼の薬指と同じ物が入っていた。

「……ありがとう、嬉しい」

 誓いの言葉はなくても、その言葉は自然に口に出て、そのまま薬指に嵌めていた。
< 27 / 31 >

この作品をシェア

pagetop