未来に続く物語
ようやく息を吐き出してみると、彼は湯川から紙袋を受け取っていて、中身を軽く覗いてから言った。
「ごくろーさん。いくら?」
「今はそれどころじゃないわ、この可愛い子は?」
二人の会話を避けるように横へずれると、彼が手を掴んできて、隣に並ばせるようにしてから、湯川に向かって言った。
「志央。俺の嫁さん」
「そう」と湯川は頷くように言い、こちらと彼を交互に見たあと、再びこちらに目を向けて言った。
「古河ちゃんでいいの?足癖悪いし、寝る時縛ったほうがいいわよ」
そこで彼が片足を軽く曲げたかと思うと、すかさず湯川が一歩引いて、澄ました顔で言った。
「ほらね」
思わず口元を緩ませてみたら、彼が湯川に向かって言った。
「うっせ、ばーか。豆選べるようになってから言え」
「怖いわねぇ、このおじさん」と湯川は『おじさん』を強調して言い、こちらに笑みを向けて窺ってきた。
吹き出しそうになるのを堪え、口元をどうにか誤魔化していると、彼は煙草に火を点け、軽く吐き出した。
「それはそう。けど、ありがとな。あとで請求送って来いよ」
そう言いながら、こちらを促すように手を引き、階段を下り始めた。
「湯川さん、ありがとうございました」と言ってみたものの、湯川は軽く手を上げて、笑みを浮かべていた。
最初は謎の人物だったけれど、とても女性らしくて、笑顔が素敵な人だと思えた。
導かれるように三階の事務所に行き、中に入って金庫を指定の位置に置いたところで、彼がこちらに向かって言った。
「そこで待ってて。ちょい話してくる」
優しげな声に軽く口を結んで頷いて見せると、すぐに彼は少し離れたデスクに居る上司の元に行った。
会話の内容は聞こえないものの、上司は彼に目を向けたまま、難しそうな顔をしたり、苦笑いを浮かべていた。
それは先程の件だと分かるけれど、羽山があんな行動を起こしたことには、こちらにも悪い部分があったのかもしれないと思い始めた。
上手く躱したつもりでいても、相手には伝わらないこともあると気づき、言葉の選び方に後悔していた。
すると、彼がこちらに戻ってきて、おもむろに口を開いた。
「あの兄ちゃん、辞めさせたってさ。詳しくは聞いてねーけど、他所でやらかしたっぽい」
「そう、なんだ……」
口にしたところで、『良かった』とは思えず、鳩尾辺りに得体の知れないものが淀んだ。
鳩尾に何かを詰められたような感覚に顔を顰めると、彼がこちらの腕に優しく手を添え、軽く撫でながら言った。
「もう考えんな。帰り道に飯……食事にでも行きましょうか、お嬢さん」
気づけば手を取られ、軽く握ると、互いの指が絡んでいた。
「ごくろーさん。いくら?」
「今はそれどころじゃないわ、この可愛い子は?」
二人の会話を避けるように横へずれると、彼が手を掴んできて、隣に並ばせるようにしてから、湯川に向かって言った。
「志央。俺の嫁さん」
「そう」と湯川は頷くように言い、こちらと彼を交互に見たあと、再びこちらに目を向けて言った。
「古河ちゃんでいいの?足癖悪いし、寝る時縛ったほうがいいわよ」
そこで彼が片足を軽く曲げたかと思うと、すかさず湯川が一歩引いて、澄ました顔で言った。
「ほらね」
思わず口元を緩ませてみたら、彼が湯川に向かって言った。
「うっせ、ばーか。豆選べるようになってから言え」
「怖いわねぇ、このおじさん」と湯川は『おじさん』を強調して言い、こちらに笑みを向けて窺ってきた。
吹き出しそうになるのを堪え、口元をどうにか誤魔化していると、彼は煙草に火を点け、軽く吐き出した。
「それはそう。けど、ありがとな。あとで請求送って来いよ」
そう言いながら、こちらを促すように手を引き、階段を下り始めた。
「湯川さん、ありがとうございました」と言ってみたものの、湯川は軽く手を上げて、笑みを浮かべていた。
最初は謎の人物だったけれど、とても女性らしくて、笑顔が素敵な人だと思えた。
導かれるように三階の事務所に行き、中に入って金庫を指定の位置に置いたところで、彼がこちらに向かって言った。
「そこで待ってて。ちょい話してくる」
優しげな声に軽く口を結んで頷いて見せると、すぐに彼は少し離れたデスクに居る上司の元に行った。
会話の内容は聞こえないものの、上司は彼に目を向けたまま、難しそうな顔をしたり、苦笑いを浮かべていた。
それは先程の件だと分かるけれど、羽山があんな行動を起こしたことには、こちらにも悪い部分があったのかもしれないと思い始めた。
上手く躱したつもりでいても、相手には伝わらないこともあると気づき、言葉の選び方に後悔していた。
すると、彼がこちらに戻ってきて、おもむろに口を開いた。
「あの兄ちゃん、辞めさせたってさ。詳しくは聞いてねーけど、他所でやらかしたっぽい」
「そう、なんだ……」
口にしたところで、『良かった』とは思えず、鳩尾辺りに得体の知れないものが淀んだ。
鳩尾に何かを詰められたような感覚に顔を顰めると、彼がこちらの腕に優しく手を添え、軽く撫でながら言った。
「もう考えんな。帰り道に飯……食事にでも行きましょうか、お嬢さん」
気づけば手を取られ、軽く握ると、互いの指が絡んでいた。