未来に続く物語
「ありがと」そう返して、受付けから抜け出すと、羽山は「今度どこか行きます?二人で」と言って軽く口角を上げた。
「後ろ向きに考えておきます」と言ってみると、「あ、考えてくれるんだ。よし、受付頑張ろ」と少し真面目な顔で姿勢を伸ばした。
ふと受付の前で鞄を持ってないことに気づき、羽山に向かい「ごめん、鞄取ってもらえる?」と声を掛けた。
すると、羽山は受付の中に置かれた鞄を手にし、軽く埃を払ってから、カウンターの上に静かに乗せた。それと同時に、脇のほうから水のペットボトルが差し出され、気づけば隣に古河が立っていた。
そこで、羽山の明るい声と古河の低い声が重なって聞こえた。
「どうぞ、ごゆっくり」
「どうも、済みませんでした」
私は羽山に視線を向け、「行ってきます」と言うと、羽山はこちらに笑いかけたあとで、古河に向かって言った。
「どっちも必要ないです。持ち帰ってください。志央さん早く行かないと、休憩時間なくなるよ」
毅然としながらも軽い口調に、少し笑みを返し、頷いて見せてから、階段を下って行った。
羽山の気持ちは分かっているけれど、現実的なことは考えられないし、年下だからという理由だけでは、断る理由として弱い。
いっそのこと受け入れてしまえば、問題点など関係なくなるのかもしれない。
そんな考えに耽っていると、足がもつれて階段を踏み外しそうになった。
その時、誰かの腕に支えられ、見上げたところで、こちらのロングピアスがどこかに引っ掛かった。
「それ以上動くな。今から触るけど、壊すかもしんないぞ」潜めたような低い声が聞こえたと同時に指先が耳に触れ、すぐに首をすぼめて黙り込んだ。
ピアス以外の金属が耳たぶを微かに掠め、白地のアノラックを着た身体が一歩引き下がり、視線を上げると、チャックにロングピアスが絡んでいた。
途端に気まずくなり、とにかく口にしようとしたところで、古河が言った。
「これ外せないから、貰っとく。虫よけにもなるし」
止める手立ても思いつかず、その言葉の意味すら考えず、ただ返した。
「ごめんなさい。よく前を見てなくて……、ご迷惑おかけしました。それ、壊してください」
「なんで?」
すかさず尋ねられたことに、再び同じように返した。
「邪魔になるので」
「どこが?」
それでも古河は表情を変えず、こちらの言葉を聞いているようには思えなかった。
けれど、今の状況を受け流す事はできても、翌日になれば古河は何もなかったように来るのが容易に分かる。それならここで断つしかない……。
「これ以上、私に構わないでください。お疲れさまでした」
「後ろ向きに考えておきます」と言ってみると、「あ、考えてくれるんだ。よし、受付頑張ろ」と少し真面目な顔で姿勢を伸ばした。
ふと受付の前で鞄を持ってないことに気づき、羽山に向かい「ごめん、鞄取ってもらえる?」と声を掛けた。
すると、羽山は受付の中に置かれた鞄を手にし、軽く埃を払ってから、カウンターの上に静かに乗せた。それと同時に、脇のほうから水のペットボトルが差し出され、気づけば隣に古河が立っていた。
そこで、羽山の明るい声と古河の低い声が重なって聞こえた。
「どうぞ、ごゆっくり」
「どうも、済みませんでした」
私は羽山に視線を向け、「行ってきます」と言うと、羽山はこちらに笑いかけたあとで、古河に向かって言った。
「どっちも必要ないです。持ち帰ってください。志央さん早く行かないと、休憩時間なくなるよ」
毅然としながらも軽い口調に、少し笑みを返し、頷いて見せてから、階段を下って行った。
羽山の気持ちは分かっているけれど、現実的なことは考えられないし、年下だからという理由だけでは、断る理由として弱い。
いっそのこと受け入れてしまえば、問題点など関係なくなるのかもしれない。
そんな考えに耽っていると、足がもつれて階段を踏み外しそうになった。
その時、誰かの腕に支えられ、見上げたところで、こちらのロングピアスがどこかに引っ掛かった。
「それ以上動くな。今から触るけど、壊すかもしんないぞ」潜めたような低い声が聞こえたと同時に指先が耳に触れ、すぐに首をすぼめて黙り込んだ。
ピアス以外の金属が耳たぶを微かに掠め、白地のアノラックを着た身体が一歩引き下がり、視線を上げると、チャックにロングピアスが絡んでいた。
途端に気まずくなり、とにかく口にしようとしたところで、古河が言った。
「これ外せないから、貰っとく。虫よけにもなるし」
止める手立ても思いつかず、その言葉の意味すら考えず、ただ返した。
「ごめんなさい。よく前を見てなくて……、ご迷惑おかけしました。それ、壊してください」
「なんで?」
すかさず尋ねられたことに、再び同じように返した。
「邪魔になるので」
「どこが?」
それでも古河は表情を変えず、こちらの言葉を聞いているようには思えなかった。
けれど、今の状況を受け流す事はできても、翌日になれば古河は何もなかったように来るのが容易に分かる。それならここで断つしかない……。
「これ以上、私に構わないでください。お疲れさまでした」