成立事項!
ボフン、と音がしたかと思えば、ベッドのスプリングがギィッと悲鳴を上げる。
思い起こしてみれば、こんなにも無我夢中になって英語を勉強したのは、受験以来だった。
「受験、かぁ‥」
呟いて、栖栗はあの日を思い出す。
英語をこんなふうに教えてもらうのは、二回目だ。
あのときは、自分の失態のせいでその人の時間を結局は無駄にさせてしまったが、今回ばかりは、そんなことは絶対にしたくない。
「頑張ってやるんだから‥っ」
栖栗は、ぐんっと伸びをし、ベッドから飛び起きてテーブルに向き直ると、もう一度ノートに単語を書き出していく。
ベッドの隣りで気持ちよさそうに寝転んでいたゴールデンレトリバーは、栖栗の邪魔にならないようにと、部屋から静かに出て行った。
部屋には、カリカリというシャープペンシルの音が響いていた。
翌朝、いつものお迎えの時間(七時半)ぴったりに英は市川家のチャイムを押した。
何せ、少しでも遅れたり早かったりすると、栖栗がうるさい。
だから、市川家の近くにある小さな公園で時間を調整する。