君だけに奏でる愛のカノン〜世界的ピアニストの甘い溺愛〜
感情的にならないよう、外で会いたいと私が申し出たから。直人にだけ声を掛けたのに、すみれもついて来た。二対一ってフェアじゃないように感じるけど、仕方ない。
そもそもフェアな人間なら、こんなことしでかさないわよね。
私はこれから、二人と話をするつもり。
昨日、奏と食事をして、家まで送ってもらったあと、私はすぐに直人に連絡した。
式まで時間がない。会場のキャンセルや招待客への連絡など、少し考えただけでも、やらなければならないことはたくさんあった。
奏の存在が私を強く支えてくれる。
さあ、始めよう。
「直人の浮気とすみれの妊娠が判明した今、私は二人を信用することができない。だから、婚約は破棄、結婚も白紙に戻す。もちろん異論はないわよね?」
私がそう切り出すと、直人はすがるような目で私を見て、すみれは明らかにホッと息を吐いた。
「お前はそれでいいのか?」
「そうせざるを得ないように仕向けたのは、あなたたち二人だよね?」
「……ごめん。本当に、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ」
「じゃあ、どんなつもりだったの? 子どもが出来なければ、バレなければいいかと思ったの?」
「……」
直人は黙り込んだ。
「もうこの事実は変えられない。だから、結婚はしない。でも、私が被った損害を軽く扱われたくない」
「そうだよな。仕事も辞めて、引越しの準備も進んでいた。……どうすればいい?」
「ここに、条件を書いてきた。今後の行動を整理してある。お互い確認したことがわかるように、読んだら署名して」
手書きではあったけれど、これ以上、約束を反故にされないようにしなければ。
テーブルの上に置いた紙を二人が覗き込んだ。
すみれがハッと顔を上げた。
「これじゃ、直人の立場がなくなるよ。酷いよ花音。好きだった人によくこんなこと言えるね」
どうやら、親族や会社の上司を含む全ての招待客に、直人が浮気をして、浮気相手が妊娠したことを包み隠さず話すことを言っているようね。
「私を好きだったはずの直人が、私にしたことは酷くないの? これは、事実を捻じ曲げないための措置だよ。自分たちに都合よく、私が浮気したことにされたりでもしたら大変だから」
「そんなことは、しない」
「直人はそう言うけど、すみれの態度を見なよ」
「私は直人のために……」
すみれはそう言って俯いた。
「私は、これから参列してくれるはずだった自分の親戚や友人にお詫びの連絡をする。それは、とてつもない屈辱だよ。自分の非じゃなくてもね」
「……すまない」
「私に必要なのは言葉だけの謝罪じゃない。この確認が終わったら、もう直接話さない。これ以降は弁護士を通すから」
私がそう言うと、直人はペンを握った。
すみれがそれを止める。
「待って直人。慰謝料も二人に請求するって書いてあるよ。式場のキャンセル代も払うのに」
「……当然だろ。俺が悪いんだ」
「でも……」
直人は、署名した。そしてペンをすみれに渡す。
すみれは、直人と私を交互に見て涙ぐんだ。
「酷いよ、花音」
「すみれ、もう止めろ」
すみれは、いつまでも署名を拒んだ。
痺れを切らした私は、紙をしまおうとした。
「待って。署名したら……署名するから、許してくれる?」
そもそもフェアな人間なら、こんなことしでかさないわよね。
私はこれから、二人と話をするつもり。
昨日、奏と食事をして、家まで送ってもらったあと、私はすぐに直人に連絡した。
式まで時間がない。会場のキャンセルや招待客への連絡など、少し考えただけでも、やらなければならないことはたくさんあった。
奏の存在が私を強く支えてくれる。
さあ、始めよう。
「直人の浮気とすみれの妊娠が判明した今、私は二人を信用することができない。だから、婚約は破棄、結婚も白紙に戻す。もちろん異論はないわよね?」
私がそう切り出すと、直人はすがるような目で私を見て、すみれは明らかにホッと息を吐いた。
「お前はそれでいいのか?」
「そうせざるを得ないように仕向けたのは、あなたたち二人だよね?」
「……ごめん。本当に、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ」
「じゃあ、どんなつもりだったの? 子どもが出来なければ、バレなければいいかと思ったの?」
「……」
直人は黙り込んだ。
「もうこの事実は変えられない。だから、結婚はしない。でも、私が被った損害を軽く扱われたくない」
「そうだよな。仕事も辞めて、引越しの準備も進んでいた。……どうすればいい?」
「ここに、条件を書いてきた。今後の行動を整理してある。お互い確認したことがわかるように、読んだら署名して」
手書きではあったけれど、これ以上、約束を反故にされないようにしなければ。
テーブルの上に置いた紙を二人が覗き込んだ。
すみれがハッと顔を上げた。
「これじゃ、直人の立場がなくなるよ。酷いよ花音。好きだった人によくこんなこと言えるね」
どうやら、親族や会社の上司を含む全ての招待客に、直人が浮気をして、浮気相手が妊娠したことを包み隠さず話すことを言っているようね。
「私を好きだったはずの直人が、私にしたことは酷くないの? これは、事実を捻じ曲げないための措置だよ。自分たちに都合よく、私が浮気したことにされたりでもしたら大変だから」
「そんなことは、しない」
「直人はそう言うけど、すみれの態度を見なよ」
「私は直人のために……」
すみれはそう言って俯いた。
「私は、これから参列してくれるはずだった自分の親戚や友人にお詫びの連絡をする。それは、とてつもない屈辱だよ。自分の非じゃなくてもね」
「……すまない」
「私に必要なのは言葉だけの謝罪じゃない。この確認が終わったら、もう直接話さない。これ以降は弁護士を通すから」
私がそう言うと、直人はペンを握った。
すみれがそれを止める。
「待って直人。慰謝料も二人に請求するって書いてあるよ。式場のキャンセル代も払うのに」
「……当然だろ。俺が悪いんだ」
「でも……」
直人は、署名した。そしてペンをすみれに渡す。
すみれは、直人と私を交互に見て涙ぐんだ。
「酷いよ、花音」
「すみれ、もう止めろ」
すみれは、いつまでも署名を拒んだ。
痺れを切らした私は、紙をしまおうとした。
「待って。署名したら……署名するから、許してくれる?」