君だけに奏でる愛のカノン〜世界的ピアニストの甘い溺愛〜
私の独奏の後、彼の音が滑り込むように入ってきた。
――弾きやすい! なんて滑らかなの?
これで初見だなんて信じられない。
私たちの音は、深く絡み合い、調和していった。
彼が私を引き立てるようにあおるから、私の心はどんどん弾んでいく。
気持ちが良くなり、つい急にアレンジを入れてしまう――私の癖。けれど彼は、最初から知っていたかのように反応する。私は驚きながらも、さらに自由に音楽を展開していくことができた。
弾きながら曲が進化していく――私の音なのか、彼の音なのか分からなくなるほど、二人の音が共鳴していく。
どんなに相性がいいと思った相手とも、こんな風になることはなかった。
まさに初体験だと思った。
幸せの絶頂の中で曲が終わる。
最後の余韻が消えた途端、会場に割れんばかりの拍手が湧き起こった。
――最高の気分!
ピアノ越しに彼を見ると……信じられないものを手にした瞬間に酔いしれる、恍惚とした視線とぶつかった。
独りよがりではない。
一人では到達することのできなかった、自分の限界を超えた先にある景色を見たような気がした――二人で一緒に。
**
「そうそう。そして二人で拍手喝采を受けながら観客に挨拶して、舞台の袖に戻った途端気を失ったんだよね。演奏前からの疲労や極度の緊張が一気に出ちゃったんだろうね」
あの時の感動が胸に蘇り、言葉を詰まらせる私の話を光希が引き継いでくれた。
「うん。そして医務室で目覚めた時には、彼はもういなかった」
彼が本番で着ていたジャケットが、私に掛けられていただけ。
「ああ、何度聞いても不思議だけど美しい話よね」
「本当。音の共鳴で自分の限界を超える。……私も、そんな瞬間に出会ってみたい」
「ね〜。羨ましい」
友人たちが私の想いを受け止めてくれる。
「でも彼とは、それっきり」
「名前も分からないとか、ドラマチックすぎるよね」
「正直なところ、目元が隠れていたから顔もよく分からない」
「すごいイケメンだったかもよ」
「それは、わからないけど……」
「でも、いいの? そんな瞬間を共にした貴重な人を忘れられる?」
梓の呟きに、私は思わず笑ってしまった。
「忘れることはできないと思う。だけど、誰だかわからないのだもの、仕方ないわ。それに……いつまでも夢みてばかりいられない。現実を生きないと」
「そうね。……でも花音は、もうすぐ結婚だしリア充だよね」
「リア充……そうなのかな。不安はたくさんあるけど」
「ええっ? 結婚決まると幸せしかないんじゃないの?」
梓の疑問にメンバー内唯一の既婚者である光希がツッコミを入れる。
「それならマリッジブルーって言葉ができるわけないじゃない。まあ、結婚は素敵だけど、結婚後もいろいろあるものよ〜」
「そうなの? 参考にしたいから、その辺具体的に」
「その話はまた今度ね。だって今日は、これから結婚する花音の残り少ないシングルライフを堪能する日だもの」
「そうね! じゃ、また乾杯しようか」
「いいね。何度でも乾杯しよう!」
そんな風に私の「バチェロレッテ・パーティー」は夜明けまで続いた。
――弾きやすい! なんて滑らかなの?
これで初見だなんて信じられない。
私たちの音は、深く絡み合い、調和していった。
彼が私を引き立てるようにあおるから、私の心はどんどん弾んでいく。
気持ちが良くなり、つい急にアレンジを入れてしまう――私の癖。けれど彼は、最初から知っていたかのように反応する。私は驚きながらも、さらに自由に音楽を展開していくことができた。
弾きながら曲が進化していく――私の音なのか、彼の音なのか分からなくなるほど、二人の音が共鳴していく。
どんなに相性がいいと思った相手とも、こんな風になることはなかった。
まさに初体験だと思った。
幸せの絶頂の中で曲が終わる。
最後の余韻が消えた途端、会場に割れんばかりの拍手が湧き起こった。
――最高の気分!
ピアノ越しに彼を見ると……信じられないものを手にした瞬間に酔いしれる、恍惚とした視線とぶつかった。
独りよがりではない。
一人では到達することのできなかった、自分の限界を超えた先にある景色を見たような気がした――二人で一緒に。
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「そうそう。そして二人で拍手喝采を受けながら観客に挨拶して、舞台の袖に戻った途端気を失ったんだよね。演奏前からの疲労や極度の緊張が一気に出ちゃったんだろうね」
あの時の感動が胸に蘇り、言葉を詰まらせる私の話を光希が引き継いでくれた。
「うん。そして医務室で目覚めた時には、彼はもういなかった」
彼が本番で着ていたジャケットが、私に掛けられていただけ。
「ああ、何度聞いても不思議だけど美しい話よね」
「本当。音の共鳴で自分の限界を超える。……私も、そんな瞬間に出会ってみたい」
「ね〜。羨ましい」
友人たちが私の想いを受け止めてくれる。
「でも彼とは、それっきり」
「名前も分からないとか、ドラマチックすぎるよね」
「正直なところ、目元が隠れていたから顔もよく分からない」
「すごいイケメンだったかもよ」
「それは、わからないけど……」
「でも、いいの? そんな瞬間を共にした貴重な人を忘れられる?」
梓の呟きに、私は思わず笑ってしまった。
「忘れることはできないと思う。だけど、誰だかわからないのだもの、仕方ないわ。それに……いつまでも夢みてばかりいられない。現実を生きないと」
「そうね。……でも花音は、もうすぐ結婚だしリア充だよね」
「リア充……そうなのかな。不安はたくさんあるけど」
「ええっ? 結婚決まると幸せしかないんじゃないの?」
梓の疑問にメンバー内唯一の既婚者である光希がツッコミを入れる。
「それならマリッジブルーって言葉ができるわけないじゃない。まあ、結婚は素敵だけど、結婚後もいろいろあるものよ〜」
「そうなの? 参考にしたいから、その辺具体的に」
「その話はまた今度ね。だって今日は、これから結婚する花音の残り少ないシングルライフを堪能する日だもの」
「そうね! じゃ、また乾杯しようか」
「いいね。何度でも乾杯しよう!」
そんな風に私の「バチェロレッテ・パーティー」は夜明けまで続いた。