君だけに奏でる愛のカノン〜世界的ピアニストの甘い溺愛〜
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 結婚式まであと二週間となった。

 有給消化も終わり、私は今日、正式に退職する。

 もう引き継ぎは全て終わっているし、書類を受け取り、挨拶回りをした後、会社を後にした。

 最初の角を道の反対側に渡ったところで振り返り、会社のビルを見上げる。

 ここでお世話になって五年が経ったのだな……と感慨深く眺めていると、ビルから見知った人影が出てきた。

 ――直人だ。

 私は、声を掛けようと道を戻り出した。けれど、私と反対側に歩き出した直人を追う女性の姿が見えた。

 あれ? 

 その女性の後ろ姿に、見覚えがあった。

 あの茶色いふわふわの髪は――すみれ?

 そう思った時、声をかけられた様子の直人が振り返り、すみれらしき女性に気付く。すると、直人は、左右を見渡した後、女性の肩を抱いて角を曲がり見えなくなった。

 反対側の歩道に立つ私に気付きもせずに。

 ――どういうこと?

 訳がわからず、しばらくその場に立ち尽くしてしまったけれど、我に返った私は、慌てて二人を追った。

 信号を渡り二人が曲がった角まで来たけれど、もう二人の姿は見えなかった。

 ……嫌な予感が、した。

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 あれから何度か連絡したけれど、直人に繋がらない。すみれも同様で、二人に連絡がつかないまま夜になってしまった。

 最近、体調不良を理由に私と会おうとしなかったすみれ。

 周囲を確認してから肩を抱いた直人。

 これが何を意味するのか……考えたくないことばかりが頭に浮かんでくる。

 一人でどんなに考えても答えは出ない。

 私は、部屋の鍵を掴むとコートを着て家を出た。

 ――直人のマンションに行ってみよう。

 電車に乗り直人のマンションへ向かう。

 二階の直人の角部屋には灯りがついていた。

 家にいることがわかり、少しホッとする。

 エントランスで呼び出しボタンを押すと、セキュリティカメラのライトが光った。

「花音……」

 直人の驚き交じりの声がした。

「直人、聞きたいことがあるの。開けて」

 私がそう言うと、エントランスの自動ドアが開いた。

 直人の部屋が近づくにつれて、なぜか心が重くなっていった。

 何度も来た直人の部屋のドアを開ける。

 玄関には、私の物ではない女物の靴。

 靴を脱いで部屋に上がると……リビングには、すみれがいた。

 今まで直人の家に、私の友達が一人で遊びに来ることなど、なかった。

 心臓が早鐘を打つ。

 ――嘘でしょう? どうか嘘だと言って。

 私が納得するような理由を言って安心させて。
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