君だけに奏でる愛のカノン〜世界的ピアニストの甘い溺愛〜
「僕の名前を知っていたの?」
「え? あなた、奏っていう名前なの?」
「そうだよ。月城奏。君、あの時一緒にピアノを弾いた子だよね?」
「そう。私の曲を二人で弾いた……」
「やっぱり……今度こそ聞きたい。君の名前は?」
「……」
私は驚きすぎて言葉に詰まってしまった。
「……君の名前を教えて」
「……麻倉……花音」
「カノン? パッヘルベルにちなんだの?」
「母がカノンが好きで……。私の名前は、花の音と書いて花音」
「そうなんだ、素敵な名前だね。……どうして僕の名前を知っていたの?」
「知っていたわけじゃないわ。あなたが美しい音を奏でる人だったから、勝手に奏君と呼んでいただけ」
「そうなんだ。……その通りだったね」
私たちは微笑みを交わした。
「ねえ、今時間ある? せっかく再会できたから、話したいな」
奏にそう言われて、嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「もちろん。私、ずっとずっと、あなたと話をしたいと思っていたの」
「僕もだよ。たくさん……話をしよう」
私たちは、駅に戻ってカフェに入った。
「あの日、君が倒れてしまって……すごく心配だったけど、フライトの時間が迫っていて行かざるを得なくて」
「そうだったの。……目覚めたらあなたが着ていたジャケットだけが残っていて……夢だったのかと思ったわ。あなたの存在も、あの感動も」
「ごめん。目覚めるまで居たかったんだけど……でも、連絡先のメモを残したんだ」
「ええ? そうなの? ……私は受け取ってない」
「本当に? ……そうだったのか。僕は君から連絡をもらえるかもと、ずっと待っていたのだけど」
「そうだったの……。どこに置いた?」
「置いたんじゃなくて、君の友達だっていう子に預けたんだよ。茶色いふわふわの髪の子」
……すみれだ。
「ただ、僕はその頃あまり日本語が得意じゃなくて。……もしかしたら、上手く伝わらなかったのかも」
「え? どういうこと?」
「僕は、見ての通り日本人なんだけど……親の都合で一歳からずっとオーストリアに住んでいたんだ。両親とは日本語で話していたけど、読み書きは得意じゃなかったし、会話も正直微妙だった」
「……なるほど。ドイツ語で何か言いながら連絡先を渡したなら、その子は自分がナンパされたと思ったかもね」
そこで、奏は頭を抱えた。
「そうか……その可能性もあるね。でも、身振り手振りで花音に渡してって伝えたつもりなんだけど」
身振り手振りまでしたのに、私に渡さないってことある? その頃からすみれは私にわだかまりがあったのかも。どうやら親友だと思っていたのは……私だけだったのね。
「……残念だったけど。仕方ないわね」
「うん。あの時は、君と演奏してだいぶ興奮していたし、時間に焦っていたし」
「でも、今はすごく上手じゃない。苦手だったと思えないくらい」
「それは、君と話したくて猛勉強したから」
「……私と話すために?」
「そうだよ。いつか君と話せることを夢見て、必死だった」
「え? あなた、奏っていう名前なの?」
「そうだよ。月城奏。君、あの時一緒にピアノを弾いた子だよね?」
「そう。私の曲を二人で弾いた……」
「やっぱり……今度こそ聞きたい。君の名前は?」
「……」
私は驚きすぎて言葉に詰まってしまった。
「……君の名前を教えて」
「……麻倉……花音」
「カノン? パッヘルベルにちなんだの?」
「母がカノンが好きで……。私の名前は、花の音と書いて花音」
「そうなんだ、素敵な名前だね。……どうして僕の名前を知っていたの?」
「知っていたわけじゃないわ。あなたが美しい音を奏でる人だったから、勝手に奏君と呼んでいただけ」
「そうなんだ。……その通りだったね」
私たちは微笑みを交わした。
「ねえ、今時間ある? せっかく再会できたから、話したいな」
奏にそう言われて、嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「もちろん。私、ずっとずっと、あなたと話をしたいと思っていたの」
「僕もだよ。たくさん……話をしよう」
私たちは、駅に戻ってカフェに入った。
「あの日、君が倒れてしまって……すごく心配だったけど、フライトの時間が迫っていて行かざるを得なくて」
「そうだったの。……目覚めたらあなたが着ていたジャケットだけが残っていて……夢だったのかと思ったわ。あなたの存在も、あの感動も」
「ごめん。目覚めるまで居たかったんだけど……でも、連絡先のメモを残したんだ」
「ええ? そうなの? ……私は受け取ってない」
「本当に? ……そうだったのか。僕は君から連絡をもらえるかもと、ずっと待っていたのだけど」
「そうだったの……。どこに置いた?」
「置いたんじゃなくて、君の友達だっていう子に預けたんだよ。茶色いふわふわの髪の子」
……すみれだ。
「ただ、僕はその頃あまり日本語が得意じゃなくて。……もしかしたら、上手く伝わらなかったのかも」
「え? どういうこと?」
「僕は、見ての通り日本人なんだけど……親の都合で一歳からずっとオーストリアに住んでいたんだ。両親とは日本語で話していたけど、読み書きは得意じゃなかったし、会話も正直微妙だった」
「……なるほど。ドイツ語で何か言いながら連絡先を渡したなら、その子は自分がナンパされたと思ったかもね」
そこで、奏は頭を抱えた。
「そうか……その可能性もあるね。でも、身振り手振りで花音に渡してって伝えたつもりなんだけど」
身振り手振りまでしたのに、私に渡さないってことある? その頃からすみれは私にわだかまりがあったのかも。どうやら親友だと思っていたのは……私だけだったのね。
「……残念だったけど。仕方ないわね」
「うん。あの時は、君と演奏してだいぶ興奮していたし、時間に焦っていたし」
「でも、今はすごく上手じゃない。苦手だったと思えないくらい」
「それは、君と話したくて猛勉強したから」
「……私と話すために?」
「そうだよ。いつか君と話せることを夢見て、必死だった」