元カレ副社長は、初恋を拗らせていた

 神谷くんとは、スクモンをきっかけに気軽に話すようになった。

 そのうち、話題はスクモンに限らなくなっていた。授業や課題のこと、先生のこと。今思えばどうでもいいような話まで、毎日交わした。

 そんな日々の中で、私が勝手に作り上げていた「神谷琥二郎」の人物像は、少しずつ塗り替えられていった。

 友達といる時に見せる無邪気な笑顔。気怠げに頬杖をつく横顔。授業中、ときおり見せる真剣な眼差し。そしてスクモンを語る時の、少年みたいに楽しそうな表情。

 彼のいろんな顔を知るたびに、どうして彼があんなにモテるのか、身をもって思い知らされていった。

 そんなふうにすっかり打ち解けた頃、訪れた席替えの時間。

 私は前から二番目の窓側。神谷くんは、廊下側の一番後ろ。

 見事に離れてしまった。

 私の気持ちは、驚くほどわかりやすく沈んだ。

 案の定、神谷くんの席の周りには陽キャグループが集まっている。あの輪の中へ、私が一人で話しかけに行けるわけがなかった。

 この気持ちに、もう、気づかないふりはできなくなっていた。

 私は、神谷くんを好きになってしまったんだ。

 それを自覚した時には、彼はまた遠い存在になっていた。席が離れただけなのに、彼の周りにはいつも人がいて、話しかけるきっかけもつかめない。

 寂しいと思っているのは、きっと私だけ。

 遠目に見る神谷くんはいつも楽しそうだし、
 神谷くんが好きになる人は、あの輪の中にいる子たちだから……。

 この恋は、始まる前に胸の奥へしまうしかないのだと、そう悟った。

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