元カレ副社長は、初恋を拗らせていた
彼はそう言いながら、私の席までゆっくり歩いてくる。
「久しぶりだね。こうやって話すの」
「そういえば、そうだね」
彼と話せていないことを自分が一番気にしていたくせに、なんともないふりをしてしまう。
「小林さんと席が離れたの、俺、けっこうショックだった」
彼は少し困ったように笑った。いつもの無邪気な笑顔とは違う。その表情に、胸がざわつく。
「小林さんと話すのが好きなんだ。スクモンの話だけじゃなくて、どうでもいい話も。小林さんと話してるときは、俺、素でいられるんだよね」
……嬉しい。
胸の奥が温かくなり、鼓動がどんどん速くなっていく。
彼は一度視線を落とし、それからまっすぐ私を見た。
「俺、小林さんが好きだよ。俺と……付き合ってほしい」
思わず、両手で口元を覆った。
涙がにじみそうになり、慌てて息を吸い込む。
「わたし……でいいの……?」
「うん。小林さんがいい」
まっすぐな瞳を見つめ、私は小さくうなずいた。
「私も……神谷くんが、好き」
顔がぶわっと熱くなる。
「マジ……?やった!」
今まで見たことがないほど、彼は嬉しそうに笑った。