元カレ副社長は、初恋を拗らせていた


 それから私たちは付き合い始めた。

 「風花!」

 私が先に学校を出ると、友達と別れた神谷くんが追いかけてきてくれる。一緒に帰る日が、少しずつ増えていった。

 「今日はみんなと遊びに行かないの?」

 「うん。風花と一緒にいたいから。ねえ、俺んちでスクモンやらない?」

 神谷くんは、いつもさらっと嬉しいことを言ってのける。

 友達との時間を私が奪っているようで、少し申し訳なくもなった。けれど、それ以上に、私と一緒にいたいと言ってくれることが嬉しかった。

 「神谷くん、強い! もうそこまで進んだの?」

 その日、私たちは神谷くんの部屋で、並んでスクモンをプレイしていた。

 「毎日やってっからね。風花もけっこう進んでるじゃん。あ、そこ、アイテムないと行けないんだよ」

 「そうなの!? ずっとここで苦戦してた……」

 教えてもらったとおりに操作すると、さっきまで進めなかった場所を抜けられた。

 「あ、ほんとだ! 行けた! すごい、神谷くん!」

 嬉しくて顔を上げると、画面をのぞき込んでいた彼が、思ったより近くにいてドキッとした。

 「ねえ、風花。……キスしていい?」

 彼の笑みが薄れ、まっすぐな眼差しが私に向けられる。

 息を詰めながら、小さくうなずいた。

 彼がゆっくり顔を近づけてくる。目を閉じると、そっと唇が触れた。

 私にとって初めてのキスは、想像していたよりもずっと優しかった。

 顔を離した彼は、真っ赤になった私を見て、嬉しそうに笑う。

 「かわいい」

 そう言って、もう一度、私の唇にキスを落とした。


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