『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません
じわりと手のひらの内側に汗をかき、人見知りが発動する。
震えそうになりながらも、リリアーナは喉から声を絞り出した。
『神官様、も、申し訳ありません……。さっき猫が置いていった、この子を埋めたらすぐに本殿に戻ります……っ』
ハンカチごと、亡骸を神官の目の前におずおずと差し出した。さっき開かれたと思われた目は、閉じられている。
神官はそれを見ると、次第に目を大きく見開いて──。
『こ、こ、これは、竜の子では……!?』
その瞬間だった。突然大きな雷鳴が響き、稲妻が光り世界を光で白く照らした。あまりの眩しさにリリアーナはぎゅっと目をつむる。
そうして次に目を開けたときには、穏やかな美しい中庭と、目のにはぽかんと口を開けた神官の顔が見えた。
ハンカチの上にあった小さな亡骸は、消えていた。
『さ、さっきのは……』
『……竜の子を君が助けた、そして竜がその子を迎えにきた……!』
『えっ?』
そんなことを大興奮の神官が叫ぶのを、リリアーナはぼうっと聞いていた。竜の子、それを竜が迎えにきたと言われても、目を瞑っていたのでなんにも見ていなかったのだ。
一瞬の眩い光、次の瞬間には、ハンカチの上にあった小さく不思議な生き物の姿は消えていた。リリアーナの真実は、これだけ。
興奮した神官の声に人々が集まり、その日この神殿に竜が現れたと大騒ぎになった。
『竜の子を助けたリリアーナには竜の加護がきっと与えられるだろう、その加護はいつか国の繁栄の助けになる』と神官は興奮しながら語った。
はっきりしたそうだと記された文献も、そうだった人の記録もない。けれど神官、のちに大神官だとわかった老人が言ったものだから誰もがそれを信じた。