『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません

 長身で体格がよく、なにより美形な英雄騎士。伯爵アザール家の次男で、現在は副団長の補佐的な立場でいる。

 いつか騎士団長にもなれると噂されているほどの、素晴しい剣の腕前を持つ人物だ。

 そんな人が、やつれて華の無い自分なんて覚えているはずもない。会話だって、数えられるほどした交わしたことがない。

(それに、覚えていられても……。私がシルバ様に貶されている姿を、アザール様に見られたら嫌だな)

 そう思うと、リリアーナ心の中に冷たい風が吹き抜けた。療養所でひとりの人間らしく働いた日々が、さあっと色褪せてしまいそうな風だ。

 情けなさに、じわ、と涙が滲んで落ちてきそうになるのを、必死で堪える。大変な中で皆で支え合ったあの療養所での日々が、涙と一緒に流れていってしまわないようにだ。

 礼拝堂では大神官が中心となって、一斉に祈りが捧げらる。戦争の勝利の感謝、亡くなった多くの命が竜に導かれ天の国にいけるよう、そしてサリュー国の安寧秩序を願う。

 祈りの時間が終わり、ふっと空気が緩む。

 数日後には城で勝利の祝いの宴が執り行われる予定で、そこで今回の功労者であるグレイに、褒美が与えられることになっていた。
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