『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません

 国王はグレイのために張り切って領地を用意したらしいが、グレイ本人は褒美を辞退するらしいという噂をリリアーナは聞いた。領地を治める時間を、剣の鍛錬に使いたいという話だ。
 それはグレイらしいと、リリアーナは思っていた。療養所で見かけたグレイは、負傷した騎士団員に『早く怪我を治して、また一緒に剣を振るいましょう』と励ましていたのだ。
 負傷した騎士団員は笑い、その目には生きる力をまた宿していた。
 手足や視力を失った団員にも、グレイは積極的に声をかけた。どこかが欠けても、人となりが失われた訳ではない。仕事がないか、自分が上司に掛け合うと語った。
 そのおかげか療養所では怪我のために自暴自棄になる負傷者は少なく、悲惨な状況でも皆が前向きに治療に励めた。
 あちこちから、グレイを讃える声が上がる。国の英雄だと、賑やかな雰囲気になっていく。
 リリアーナの隣に座るシルバの貧乏揺すりが激しくなり、この状況がシルバにとって面白くないのだとリリアーナは察した。戦争中、シルバはなんやかんやと理由をつけて、一度も戦場へ士気をあげるための訪問などを行わなかったのだ。
(一度でも戦場のあの惨状を、せめて療養所に慰問をして見ていたら、イライラなんてできないはずよ。戦争なんて二度とごめんだと、争いのない未来を作ろうと将来の国王としての覚悟だってできたはずなのに。どうしてこの人は……)
 普段誰かにこんな風に讃えられることがなく、また、美青年だということでグレイにさらに注目が集まるのもシルバは面白くないのだろう。

 ちらりとその顔を見ると、グレイの方を睨みつけてこめかみに青筋を立てている。気に入らない、そんな気持ちが表情から伝わってくる。

 騎士団員たちの元気な姿も見られたし、早く解散になって……!と、リリアーナが冷や冷やしながら願っていたときだ。 

 シルバが突然、乱暴に立ち上がった。その拍子に手が座っていたリリアーナの片目に当たったが、それに気づいてもシルバは舌打ちをするだけだ。

(……こいつ! 本っ当に性格が悪い!)

 予期せぬ衝撃に、リリアーナは自分の目を手で押さえた。じんじん、と酷く目が痛む。ただ、痛がっていても誰かが助けてくれる訳ではないので、自分もゆっくりと立ち上がった。
 しかしバランスを崩し、よろめいてしまった。

「……あっ」

 虚弱なリリアーナには踏ん張る力もなく、咄嗟に転倒を覚悟した。せめてベンチに頭をぶつけませんようにと、祈ることしかできない。
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