『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません
 今日は一年に及ぶ隣国との領地をめぐる戦争を終わらせた騎士たちが、勝利を神に伝えるための報告会が神殿の礼拝堂で執り行われる。それを見守るために王族をはじめ、そうそうたる上位貴族たちが集まっていた。

 彫刻の施された柱が並ぶ大回廊の奥、磨き上げられた白大理石造りの美しい本殿にある礼拝堂は、荘厳な空気に包まれている。お喋りもはばかられる雰囲気の中、王太子の大きな声だけが響く。

 シルバの発言に、国王はまたはじまったというような表情を浮かべ、小さく首を横に振る。貴族たちは目配せ合い、リリアーナはいたたまれなくなり下を向いた。

 言葉も態度も酷いシルバに、正面から立ち向かえたことはない。強い言葉に心臓はちぢみ、酷い態度に体が動かなくなってしまうからだ。

 ──けれど、どうにか心だけは砕かれないようにと、シルバにこっそりと想像の中だけで反抗をしている。

(……私に人間の頭をかち割るほどの力と、あなたを跪かせる立場がなかったことを感謝するべきだわ。でなければ、いますぐにでもこの手でシバくぞ……)

 リリアーナは揃えた膝の上で軽く握りしめていた青白い拳に、密かに力を込める。そうして想像の中で、自称美しい王太子の頬にキツイ一発をお見舞いした。

 そんな想像などつゆも知らない王太子は、ひとりふんぞり返っている。リリアーナは貴族たちの視線が自分に集まるのを、チクチクと肌で感じていた。

 こそこそと、囁き声まで聞こえてくる。

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