『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません
それでも、やはりグレイを巻き込む訳にはいかない。リリアーナは、痛む目から流れる涙をすぐに拭った。
「……ありがとうございます、アザール様。私はもう大丈夫なので、アザール様は騎士団員様たちの元へお戻りください」
感謝の気持ちを込めて微笑みたかったのに、うまく笑えなかった。リリアーナは、もう自分がここまでおかしくなってしまったことに、絶望する。
(仕方がないわ、笑うと暴言を吐かれる生活を八年も送ってきたんですもの。私、本当に変になってしまったんだわ)
王都から離れた療養所で働いていたときも、笑えなかった。それでも一緒に働くシスターや騎士修道会の人たちは、気にした様子を見せたりはしなかった。
挨拶を交わし、共に働き食事を取り、負傷者の回復を願う。毎日がとても忙しい中で、小さな気配りで支え合った。
笑えないリリアーナの顔を、微笑みを浮かべたまま、グレイが見つめてくる。グレイの後ろでは、当のグレイに無視されたままのシルバが怒鳴り散らかしている。
「あの、アザール様、このままではシルバ様になにをされるかわかりません。だから、早く離れた方が……えっと、アザール様?」
グレイは、リリアーナを離さない。
「あんなのは、お気になさらずに。さあ、このまま医者の元へ向かいましょう」
「えっ!」