『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません
国王の了承を得た大神官は、グレイとリリアーナに向かって、ゆっくりと声をかけてきた。
「サルバル・リリアーナ。君と殿下の婚約は、ここで破棄された。……今まで、よく頑張ったな。アザール・グレイ。サルバル・リリアーナ。二人の婚約を祝福しよう。おめでとう、幸せになるんだよ」
リリアーナの痩せた手を、大神官の皺だらけの手が触れた。
あの日この神殿の中庭で、小さな白い生き物を見た、この国で二人ぼっちの存在だ。リリアーナの運命が辛い方向へ向かってしまっていたのを、大神官が苦しく思っていたのはリリアーナもわかっていた。
改善がされるよう何度も働きかけてくれたことに、本当に感謝していた。
「ありがとうございます、大神官様。俺はリリアーナを、必ず幸せにします」
気遣ってくれるグレイに、リリアーナは感謝する。すると礼拝堂を飾るステンドグラスから、不思議な光が二人を照らした。
向き合ったグレイとリリアーナの金の髪が、淡く輝く。
生きる希望を見失っていたリリアーナの暗い瞳に光が入ると、その琥珀色が煌めいた。くすんだ肌は白く透き通るようで、いまにも消えてしまいそうな儚さに人々は息を呑んだ。
痩せてしまったが、リリアーナは確かに美しい女性なのだと、その場にいた誰もが確信した。
「……英雄騎士が、あんなに入れ込んでいる。もしかして、サルバル嬢は嘘なんてついていないんじゃないか?」
「ああ、神と等しい竜を見たなんて嘘をついたら、罰だって当たるだろうに。だけど彼女は、無事だ」
「大神官様だって見たっていうんだ。やはり、竜はいたんだよ」
手のひらを返したように、高位貴族たちがざわつく。国王はなにか言いたげにしていたが、大神官に睨まれてそのまま黙った。
リリアーナ・サルバルはその日、王太子から下げ渡される形で、サリュー国を戦争の勝利に導いた、グレイ・アザールの婚約者となった。