『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません
どんな宝石や美貌よりも、毎日の激務で身なりを整える暇もない、リリアーナの痩せた姿や目、その覚悟が心を撃ち抜いた。
(……あ、俺はこの人を、ここで死なせてはいけない。そのために、俺も……生き抜かないといけないんだ)
衝撃が、グレイを襲う。
ドッドッドッと心臓は強く鼓動を打ち、胸からは、切なさが急激に込み上げてきた。折れてしまいそうなリリアーナの細い腕に、触れてみたいとはじめて思った。
騎士であるグレイは、死を覚悟していた。奇跡が自分からこぼれ落ちて死んでも、それはもう仕方がないと感じていた。
恐怖はいつしか麻痺してしまっていたけれど、今、グレイの手のひらは汗でぐっしょりと濡れていた。
死にたくない、生きている人間の本能が、魂が叫ぶ。
嗅ぎなれた戦場の匂いに、ゾワッと、全身が総毛立つ。慣れが一番の油断だと、騎士団長が何度も繰り返して言っている意味をそこで強く理解した。