『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません

(けれど、覚悟を決めて王都に帰って良かった。グレイ様が私を助けてくれて、家族の元に戻れた)

 グレイが怒涛の勢いで進めてくれた結婚を、リリアーナは『同情婚』だと思っている。優しいグレイが、気の毒に思って娶ってくれた。それに結婚したばかりなのに、家族の元にいることを許してくれている。

(寝室だって、共にしたことは一度もない。きっと私が酷く痩せていたから、そういう気にもならなかったのでしょう。それに『同情婚』だもの。けど……)

 ──彼の好みの女性は、どんな感じなのだろう。お付き合いしていた人はいたのか、夢中になって恋をした人の姿は?

 ぐるぐると考えると、モヤモヤが胸を重くする。

 同情されていると思うと、自分とグレイの間に線が引ける。最初に決めた通り、彼に離縁を告げられたり、好きな人ができたときには潔く身を引く。

 お飾りにもなれない妻だけれど、彼のためなら使用人と同じように働き尽くせる。

 けれど、グレイに愛されたいと強く願ってしまったら、リリアーナを取り巻く世界は一変してしまうだろう。自分と他の女性を比べて、惨めな姿を見られていたことを悔やんで、同情で助けてもらったことを情けなく思うのだ。

 尽したい気持ちは変わらないけれど、いざとなったら潔く身を引けるかどうか……。

(私にも、こういった感情があることに驚くわ。醜態を晒さずに、お別れができるのかな。好きになってはいけないのに、もうこれ以上は迷惑をかけたくない……)

 はあっと、大きなため息をつく。リリアーナは気を取り直して、再び自分の口角を指でもう一度クイッと上げた。
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