『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません
真夜中、時計の二針がてっぺんを過ぎたころ。屋敷の外が騒がしくなった。灯りを持った使用人が、背の高いひとりの男性を出迎えたのが窓から見える。
ひと足早く早馬に乗ってやってきたのはグレイの兄で、あとから伯爵とリリアーナの父が追いかけてきているという。
額に汗を浮かべて眠るグレイを見て、義兄は息を吐いた。
「……リリアーナさん、弟が心配をかけて悪かったね」
「いえ……。グレイ様は、私に会いにこなければ、こんな目には遭わなかったんです。だから悪いのは私で……」
謝ろうとすると、義兄は「待って」とリリアーナが頭を下げようとするのを止めた。
「リリアーナさんが謝ることじゃないよ。それに、グレイはリリアーナさんの体調を考えて、ご生家で過ごすことを提案したんだ。その提案には、僕たちアザール家の人間も賛成した。だから、ひとりで責任を感じてはいけないよ」
「でも……っ」
必死になるリリアーナに、義兄が改めて目を合わせる。そうして、ふっと微笑んだ。