『欠陥品だがくれてやる』と下げ渡されましたが、英雄騎士の旦那さまは私を激重愛で離してくれません

 ぴくり、とグレイの手が動いたのでリリアーナは目を開いたが、グレイは変わらず眠ったままだ。

 そのうちに急激な疲労感がやってきた。食事もとらず、昼から真夜中までずっとグレイに付き添っている。なにか少しでも口にしてと母は心配してくれたけれど、とても固形物が喉を通るような精神状態ではなかったのだ。

 ほんの数分だけ、とリリアーナはなんとか疲労感を拭うために目を閉じると、体の力が急に抜け瞼の裏に突然真っ白な世界が現れた──。

「なに、ここは一体……」

 夢にしては空気感がリアルで、けれど現実ではこんな場所は知らないし、行ったこともない。とにかくすべてが真っ白で、気を確かに持っていなければ、上下さえわからなくなりそうな感覚まである。

 すると遠くに人影が見えて、リリアーナにはそれがグレイだとすぐにわかった。

「グレイ様っ!」

 名前を叫んで必死に駆け寄ると、グレイが振り返った。その表情は穏やかで、とても毒に侵されて苦しんでいる様子ではない。

「リリアーナ……? ああ、ちょうど良かった。この可愛らしい生き物を見てくれ、俺の足元にじゃれついて、さっきから歩けないでいたんだ」

「えっ?」

 グレイが指差すその足元を見ると、いつか拾い上げた、あの小さくて白い生き物が、グレイの爪先にくっついていた。前に進もうとすると爪先から離れ、足の裏に潜り込む。

 そのまま踏む訳にいかずグレイが歩みを止めると、白い生き物は爪先にまたしがみつくという。
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