三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
待ち合わせは、土曜日の夕方。
駅に隣接した商業施設の、一階の時計の下にした。約束の五分前に着いた私は、スマホを取り出した。

『着きました。白のトップスに、カーキのパンツです』

送信すると、すぐに既読がついた。

『俺もいる』

顔を上げると、柱のそばに黒いトップスを着た男の子が立っていた。
手元のスマホから目を離し、こちらを向く。

あ、写真の目だ。

彼は私と目を合わせると、片手を軽く上げた。
近づいてくる間、私はその顔を見ていた。すっと通った鼻筋に、形のいい唇。黒い前髪の下には、写真で見た切れ長の目がある。

……全部、よかった。

「真帆さん?」

声までいい。

「うん。蓮くん?」
「そ」

目の前で足を止めた彼は、私を見て、口の端を少し上げた。

「へえ。綺麗な人じゃん」

リップサービス、リップサービス。

心の中で唱えて、私は笑った。ここで浮かれては、『おねえさん』としての沽券に関わる。

「ありがとう。蓮くんも格好いいね」
「知ってる」

思わず声を出して笑ってしまった。

「そうだよね」
「そこ、同意するんだ」
「本当のことだもの」

彼の口元が緩む。写真では冷たそうに見えた目も、笑うと少し細くなった。

なるほど。こういう顔で笑うのか。

「学生証、見せてもらってもいい?」
「うん」

DMでも頼んでおいたので、彼はすぐに財布を出した。

写真と本人の顔を見比べ、生年月日を確認する。確かに二十一歳だった。
それにしても、証明写真まで格好いい。

「そんなに違う?」

声をかけられ、顔を上げた。

「え?」
「結構まじまじ見てるから」

手元へ目を戻し、ようやく何を聞かれたのかわかった。

「ああ、違うの。証明写真も格好いいなと思って」

学生証を返すと、蓮くんは少し笑った。

「それはどうも」
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