三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
店を出て時計を見ると、思っていたより時間が経っていた。

「ごちそうさまでした」
「どういたしまして。私も楽しかった」

駅へ向かいながら、次に公開される映画の話をする。スマホに予告編を出そうと足を緩めたとき、肩に手が触れた。

「おねーさん、こっち」

顔を上げると、向こうから来た数人連れが、すぐ脇を通り過ぎていった。画面を見ているうちに、通路の真ん中へ寄っていたらしい。

「あ、ありがとう」

顔を向けると、蓮くんがすぐそばにいた。肩に触れた手は、人が通り過ぎてもそのままだった。

食事中も、あんなふうに一口食べさせようとしてくれた。私が照れるのを見て、笑っていた顔を思い出す。
ご飯をご馳走するだけのつもりなのに、ずいぶん楽しませてもらっている。

「そういうの、しなくていいからね」

蓮くんが私を見た。

「そういうの?」
「ご飯、一緒に食べてくれるだけで嬉しいから。そんなに気を使わなくても大丈夫だよ」

彼の口元から、笑みが薄れた。

「……別に、サービスじゃないけど」

肩から手が離れる。私は少し首を傾げた。

「うん。でも、無理はしないでね」

蓮くんは何か言いたそうに私を見て、それから、小さく笑った。

「してないよ」
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