三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
当日、待ち合わせ場所に着いて、私は一度足を緩めた。蓮くんがいた。
黒のタートルネックに、チャコールのジャケット。すっきりした黒いパンツに革靴を合わせ、髪もいつもより少し整えている。襟元まで黒いせいか、顎のラインがよくわかった。
……そう来たか。
柱のそばに立っていた彼が、こちらに気づく。ジャケットのポケットから手を出して、軽く上げた。
「おねーさん」
いつもの声だった。
私は近づきながら、どうにか普段どおりの顔を作った。
「お待たせ」
「俺も今来た」
そう言って、蓮くんは自分の服に目を落とした。
「これで大丈夫?」
大丈夫。非常に、大丈夫です。
「うん。素敵。似合ってる」
「よかった」
口元が緩む。ああ。今日のお店、ここにしてよかった。
まだ入ってもいないけれど。
「おねーさんも、いつもと違うね」
私は自分のワンピースを見下ろした。
「お店に合わせてみた」
「似合ってる」
リップサービス、リップサービス。
「ありがとう」
お礼を言って、歩き出す。隣に並んだ彼を、もう一度見たい。
でも、今さっき褒めたばかりだ。あまりじろじろ見るのもどうだろう。信号待ちで、向こう側のお店の看板を見るふりをした。
蓮くんは、横断歩道の先を見ていた。黒い襟の上に、顎のラインがくっきり見えた。前髪の下の目元。ジャケットの肩も、綺麗に合っている。
「何?」
視線だけが、こちらに動いた。
見つかった。
「ジャケットも似合うなと思って」
「さっきも言った」
「うん。もう一回思ったの」
彼は私を見たまま、少し笑った。信号が青になる。
「行こ」
私は頷いて、隣を歩いた。
お店に入ると、窓際の席に案内された。
蓮くんが椅子を引いて座る。ジャケットの前を軽く整え、テーブルに置かれたメニューを開いた。それだけのことなのに、つい見てしまう。
黒のタートルネックに、チャコールのジャケット。すっきりした黒いパンツに革靴を合わせ、髪もいつもより少し整えている。襟元まで黒いせいか、顎のラインがよくわかった。
……そう来たか。
柱のそばに立っていた彼が、こちらに気づく。ジャケットのポケットから手を出して、軽く上げた。
「おねーさん」
いつもの声だった。
私は近づきながら、どうにか普段どおりの顔を作った。
「お待たせ」
「俺も今来た」
そう言って、蓮くんは自分の服に目を落とした。
「これで大丈夫?」
大丈夫。非常に、大丈夫です。
「うん。素敵。似合ってる」
「よかった」
口元が緩む。ああ。今日のお店、ここにしてよかった。
まだ入ってもいないけれど。
「おねーさんも、いつもと違うね」
私は自分のワンピースを見下ろした。
「お店に合わせてみた」
「似合ってる」
リップサービス、リップサービス。
「ありがとう」
お礼を言って、歩き出す。隣に並んだ彼を、もう一度見たい。
でも、今さっき褒めたばかりだ。あまりじろじろ見るのもどうだろう。信号待ちで、向こう側のお店の看板を見るふりをした。
蓮くんは、横断歩道の先を見ていた。黒い襟の上に、顎のラインがくっきり見えた。前髪の下の目元。ジャケットの肩も、綺麗に合っている。
「何?」
視線だけが、こちらに動いた。
見つかった。
「ジャケットも似合うなと思って」
「さっきも言った」
「うん。もう一回思ったの」
彼は私を見たまま、少し笑った。信号が青になる。
「行こ」
私は頷いて、隣を歩いた。
お店に入ると、窓際の席に案内された。
蓮くんが椅子を引いて座る。ジャケットの前を軽く整え、テーブルに置かれたメニューを開いた。それだけのことなのに、つい見てしまう。