三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
それから、真帆さんからのDMは来なかった。

何日かして一度やり取りを開いたけれど、俺が送った「ごちそうさまでした」で終わっている。まあ、一回会っただけだし。そのまま閉じた。

映画を見たのは、一か月ほど経った頃だった。

例の俳優が、暗い廊下の奥から出てきたところで笑いそうになった。ゆっくり開く扉の向こうに、何か知っていそうな顔で立っている。

今回は、絶対怪しい。

隣で真帆さんが見ていたら、どんな顔をするだろう。

映画館を出てから、公式アカウントの予告編をDMで送った。

『おねーさん、これ見た?』

まだ見ていないという返事に、昨日公開されたことと、面白かったことを伝える。それから、もう一つ書き足した。

『あの俳優、今回はちゃんと怪しかった』

返事はすぐに来た。

『それ、言っていいやつ?』
『予告でわかる範囲だから大丈夫』
『じゃあ、安心して疑えるね』

スマホを見たまま、口元が緩む。

『思う存分疑ってきて』

そう返すと、少ししてまた通知が出た。

『またご飯行く?』

あ、誘ってくれるんだ。

来週の土曜日に決めてから、彼女に映画も見てきてほしいと頼んだ。

会うなら、その話がしたかった。
< 30 / 90 >

この作品をシェア

pagetop