三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
待ち合わせ場所に来た真帆さんは、俺を見つけると少し表情を明るくした。

「久しぶり」
「うん。映画見た?」

挨拶の次に聞いたら、笑われた。

「見たよ」
「どうだった?」
「話したいこと、いっぱいある」

よかった。スマホをポケットにしまう。

「俺も」

歩き出す前に、真帆さんが焼肉には行けたかと尋ねた。まだだと答えると、近くによさそうな店があるという。

最初の投稿を覚えていたらしい。場所も調べてあるようだった。

「賛成」

真帆さんについて、店のある通りへ向かった。

焼肉屋では、俺が肉を焼いた。真帆さんは素直に任せて、映画の話を始める。

例の俳優が出てきたところでは、やっぱり笑ったらしい。

最後の場面については、意見が分かれた。真帆さんは、あの二人にもう一度話してほしかったと言う。俺は、話さなくてよかったと思っていた。

理由を言うと、彼女は少し考えた。

「……確かに。帰れないね」

自分の言ったことを、頭の中で試しているような顔だった。

「だから、あそこで終わってよかったんじゃない」
「もう一回見たくなった」
「俺も。最初のほう、見直したい」

焼けたハラミを彼女の小皿に置くと、袖が落ちてきた。空いた手で押し上げ、網へ視線を戻す。

「蓮くんも食べてね。焼くの、代わろうか」
「食べてるよ」

自分の皿から肉を取って口に運ぶと、真帆さんは俺のご飯を見た。もう半分くらい減っている。

本当だ、とでも思ったのか、少し笑っていた。

冷麺を食べる頃には、映画から別の話に移っていた。向かいで真帆さんが杏仁豆腐を食べ、目を細める。

そっちもおいしそうだな。

見ていると、顔が上がった。

「何?」
「いや。そっちも頼めばよかった」
「まだ頼む?」

メニューへ伸ばしかけた手を止めた。

「今日は、いいや」

まずは冷麺を食べ切ろう。そう思って箸を持ち直したのに、彼女がもう一口食べるのを見ると、やっぱり惜しかった。
< 31 / 90 >

この作品をシェア

pagetop