三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
駅へ向かう途中、真帆さんが袖口に鼻を近づけた。

「ちょっと焼肉の匂いする」
「俺もする」

自分の肩口を嗅ぐと、しっかり焼肉だった。顔を上げたところで目が合って、二人で笑う。

「映画の話もできてよかった」
「俺も。周り、まだ誰も見てなくて」
「先に見ておいてよかった」

見てきて、と言ったら、本当に見てきてくれた。

俺と話すために時間を使ってくれたんだと思うと、少し嬉しかった。

改札へ向かう後ろ姿を見ていたら、真帆さんが振り返った。片手を上げると、彼女も手を振ってホームへ向かう。

姿が見えなくなってから、俺も歩き出した。

今日は、ご飯をおごってもらいに来たんだった。

もちろん、焼肉はおいしかった。でも、それと同じくらい、映画の話をするのを楽しみにしていた。

帰りに送ったDMでは、杏仁豆腐を食べ損ねたことまで書いた。真帆さんからは、冷麺を普通サイズにしたからね、と返ってくる。

『あれは食べてよかった』

階段の脇に寄って返信すると、もう一通届いた。

『私もおいしかった。また行きたいお店になったよ』

また。

それなら、次は杏仁豆腐も食べよう。

DMを閉じてから、自分の予定を開いた。
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