三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
文庫本を貸して一週間ほど経った頃、蓮くんから読み終わったと連絡が来た。

最後の展開について送られてきた感想に、私も話したかったと返す。次の土曜日、夕方から友達に会う前に、お茶をすることになった。

「今日、俺が出すから」

本を受け取ってバッグにしまうと、蓮くんがメニューをこちらへ向けた。

「本、借りたお礼」
「そんなの、いいのに」
「俺が誘ったんだし」

チーズケーキと季節のタルトの写真が並んでいた。お店のページを見たときから食べたかったほうを、もう一度眺める。

「……じゃあ、ご馳走になろうかな」
「うん。どれにする?」

私がチーズケーキを指すと、彼も同じものにすると言った。
本の話は、注文したあとすぐに始まった。蓮くんが最初の場面を挙げ、私は途中の台詞のほうが気になったと答える。

「真帆さん、知ってたから言わなかったんだ」
「言いたかったよ。すごく」
「危なかった」

笑った彼の前に、ケーキが置かれた。

本のお礼なら、感想を聞かせてもらうだけで十分だった。でも、お店を探して誘ってくれたことも、ご馳走すると言ってくれたことも、嬉しかった。

一口食べて顔を上げると、目が合った。

「何?」
「ありがとう。誘ってくれて」

蓮くんは少し笑った。

「うん」

帰り際には、友達によろしくと言われた。知らないでしょうと返せば、「一応」と笑う。

手を振って別れてから、バッグの中の本を思い出した。
貸してよかったな。読んでもらって、よかった。
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