三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
すぐに着信が来た。

「もしもし」
「真帆さん?」
「うん。聞こえるよ」

いつもの声だった。ただ、いつもより近い。

「よかった。打つの間に合わない」

笑っている声に、私も笑った。

「私も。何回も書き直してた」
「あの写真、もう一回見た?」
「まだ」

リモコンを取り、教えてもらった場面まで戻す。言われたところで止めれば、確かに写真が写っていた。

「あ、本当だ」
「でしょ?」

耳元で声が弾んだ。

「あの台詞も、そういう意味だったんだね」
「たぶん。俺も最初、気にしてなかった」

二人で確かめながら、もう一度その場面を見た。一人で見終えたはずなのに、まだ映画の続きにいるようだった。

いつの間にか、別の話になっていた。

蓮くんは昼過ぎまで寝ていたらしい。昨日は友達とゲームをしていたと言い、私にも何をしていたかと聞いた。

「出かけてたよ。お茶して、夕方には帰ってきた」
「そっか。ご飯、食べた?」
「まだ。映画見ちゃったから」

時計を見ると、八時半を過ぎていた。

「何食べるの?」
「豚肉とキャベツがあるから、炒めようかな」
「いいじゃん」

スマホを耳に当てたまま冷蔵庫を開け、豚肉のパックを取り出す。

「蓮くんは?」
「米はある」
「炊いてあるの?」

冷凍、と返ってきたので、私は笑った。

「じゃあ、もう半分できてるね」

蓮くんが声を出して笑う。その声を聞いていたくて、キャベツを取り出す手が少し遅くなった。

「じゃあ、ご飯作るね」
「うん」

冷蔵庫を閉めても、すぐには切れなかった。

「映画、教えてくれてありがとう。電話も楽しかった」
「俺も」

返ってきた声に、口元が緩む。

「今度は、一緒に見ようよ」
「映画館で?」
「うん。見終わってすぐ話せるし」

蓮くんと並んで座るところが浮かんだ。

「いいね。何か見たいのある?」
「ある。あとで送る」

まずはご飯ね、と言うと、「はいはい」と笑って蓮くんは電話を切った。
豚肉とキャベツを炒めながらも、さっきの声を思い出していた。

食事ではない約束。
友達とも映画には行く。それなのに、蓮くんと行くのだと思うと、何を着ようかまで考えてしまう。

<本気になっちゃった?>

私は菜箸で豚肉を返した。

映画くらい、行くでしょう。

スマホが震えたので、火を弱めて見に行く。蓮くんから予告編が届いていた。

『これ』

私は先に返事を打った。

『行きたい』

送ってから、まだ再生していないことに気づいた。
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