三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。

今日はテーブルがない

予告編は、ちゃんと面白そうだった。
蓮くんが送ってくれた上映スケジュールを見て、土曜日の午後の回に決めた。チケットは彼が取っておいてくれることになった。

当日、映画館で代金を聞いても、彼は受け取らなかった。

「今日は俺が誘ったから。一緒に見たかったし」

財布を出しかけた手が止まる。彼はもう売店のメニューを見上げていたので、私も慌てて顔を上げた。

「じゃあ、飲み物は私が出すね」
「ありがとう。何にする?」
「アイスティー」

決めていたものを答えただけなのに、少し遅れた。

一緒に見たかった、か。

隣を見ないようにしながら、サイズを選んだ。
席は、ちょうど真ん中あたりだった。バッグを膝に置くと、蓮くんが「見やすい?」と尋ねる。
頷いて座り直したところで、肘掛けに置かれた彼の腕が目に入った。

今日はテーブルがない。

顔を向ければ、すぐそこにいる。私はスクリーンへ向き直った。
予告編が始まってしばらくすると、見覚えのある俳優が映った。

あの人だ。

隣を見れば、蓮くんもこちらを向いていた。口元を緩め、少しかがんできたので、私も顔を寄せる。

「また怪しい役」

耳元の低い声に、首の後ろがそわっとした。

「まだ、わからないでしょう」
「今、銃持ってたけど」

確かに。

笑いをこらえてスクリーンへ戻る。彼はもう普通に予告編を見ていたけれど、私の耳には、しばらくあの声が残っていた。
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