三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
待ち合わせ場所には、ジャケット姿の蓮くんがいた。
薄い色のシャツに、すっきりしたパンツ。こちらに気づくとポケットから手を出し、軽く上げる。

近づくまでの数歩で、つい顔を眺めてしまった。見慣れたかどうかと、見たいかどうかは別なのだ。

「お待たせ」
「ううん。ちょうどよかった」

隣に並ぶと、彼が私の服に目を向けた。

「似合ってる」
「ありがとう。蓮くんも」

彼が笑って手を差し出す。私も笑いながら、その手を取った。

予約してくれたのは、通りから少し奥へ入ったレストランだった。白いクロスのかかったテーブルに案内され、向かいに座る。

「一年、お疲れさまの会?」
「それもある」
「じゃあ、私がご馳走したかったな」

メニューを受け取った彼が、こちらを見た。

「今日は俺」

すぐに返されて、私は笑った。

「では、ご馳走になります」

料理を食べながら、この一年の話をした。
蓮くんが、どこの椅子か気になると言っていたこと。
入社したばかりの頃は、帰ったら眠くて、電話の途中で返事がなくなったこと。

「あれ、寝てたよね」
「うん。起きたら切れてた」
「おやすみって言ったよ」
「それは聞いてない」

私は笑って、グラスを取った。

「でも、仕事、楽しそうでよかった」
「楽しいよ。困ることもあるけど」
「うん」

先週は納期のことで慌てていたし、その前は、お客さんに名前を覚えてもらえたと嬉しそうだった。

「真帆さんは、今の仕事、やっぱり好き?」

聞かれて、私は頷いた。

「うん。大変なこともあるけどね」

最近任された仕事の話を少しした。まだ決まっていないことが多くて、楽しみな半面、どう進めようか迷っている。

蓮くんは時々質問しながら聞いていた。話し終える頃には、また私の仕事の話をしてしまったと気づいたけれど、彼が笑っているので、そのままデザートを待つことにした。
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