三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。
食後、蓮くんから着いたと連絡が来た。

「ごめん。ちょっと返事してもいい?」
「うん」

店の前で待っていてくれるらしい。今出るね、と送り、スマートフォンをしまう。

「迎え?」
「うん」
「結婚する人?」
「そう」

彼が楽しそうに笑った。

「心配されてるんだ」
「帰りは迎えに行くって」
「大事にされてるね」

そう言われると、まだ少し照れる。
会計を済ませて外へ出ると、入口から少し離れたところに蓮くんがいた。こちらを見て、歩いてくる。

「待たせちゃった?」
「ううん」

答えた彼の視線が、私の隣へ動いた。
二人が目を合わせる。

「あれ、蓮?」
「……何でお前がいるの」

私は蓮くんを見て、それから隣を見た。

「知り合い?」

二人とも、今度は私を見る。

「大学の友達」
「真帆さんが言ってたの、こいつ?」

蓮くんに聞かれ、頷いた。

「うん。最初にご飯に誘ってきた子」

隣で、彼が急に声を出して笑った。

「待って。よく会う子って、お前だったの?」

蓮くんは返事をせず、私の手を取った。
私はつながれた手を見下ろしてから、もう一度二人の顔を見る。

「……どういうこと?」

「俺が教えたんだよ。蓮に、こういうのもあるよって」

ああ。

私はしばらく考えてから、彼へ向き直った。

「じゃあ、ますます、ご馳走してよかった」

彼は嬉しそうに笑ったけれど、隣からは少し不満そうな声がした。

「真帆さん、もう十分食べさせたでしょ」

握られた手に、少し力がこもった。

「うん。お腹いっぱいになった?」

私が尋ねると、彼は笑ったまま頷いた。

「なった。すごく」
「それならよかった」

蓮くんが、隣で私を見た。

「何?」
「ううん」

彼のほうは、まだ面白そうに二人を見比べている。

「そっかあ。蓮だったのか」
「何だよ」
「いや。おねーさん、楽しそうに話してたから」

つないだ手が少し動いた。

「あのときは、まだ付き合ってなかったんだよ」
「うん。そう言ってたね」

言われて、自分が何を話したのか思い返す。決まった子とよく会うようになったこと。話していて楽しいし、食べたいものも合うこと。

隣を見たら、蓮くんと目が合った。

「……帰ってからね」

何も聞かれていないのに言ってしまい、彼の口元が緩んだ。

「うん」

彼が笑ったところで、隣の友達も笑った。
< 88 / 90 >

この作品をシェア

pagetop